個人事業主のパソコン購入|10万円の壁と減価償却を解説

青色申告・帳簿

最終更新日:2026年6月4日

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この記事を書いた人: 元青色申告会職員として17年間、年間500人以上の個人事業主・フリーランスの確定申告を現場で直接サポートしてきました。記帳指導・会計ソフト指導・労働保険事務・損害保険・生命保険業務を担当。

「仕事用にパソコンを買ったんですが、これって全額経費になりますか?」

青色申告会の窓口で、毎年必ず出てくる質問です。それだけ迷う人が多い。答えは「金額によって処理が3パターンある」です。知らずに減価償却すべき資産を消耗品費に入れると、税務調査で否認されることもある。逆に、知らずに分割してしまうと何年も損します。

17年間、年間500人以上の個人事業主の申告をサポートしてきた経験から、迷わなくなるよう整理します。

パソコン減価償却の基本|個人事業主が最初に知るべき「3つの金額区分」

パソコンの経費処理は、取得価額によって以下の3パターンに分かれます。
※取得価額は、税抜経理方式を採用している場合は税抜額、税込経理方式を採用している場合は税込額となります。免税事業者(インボイス未登録)は税込経理方式のみのため、税込額で判定します。

購入金額(税抜) 処理方法 適用条件
10万円未満 消耗品費として全額その年の経費 誰でも可
10万円以上30万円未満
(※令和8年4月以降は40万円未満)
少額減価償却資産の特例で全額その年の経費 青色申告者のみ
上記以外(30万円以上など) 減価償却(耐用年数4年で分割) 全員

金額の判定方法は、採用している経理方式によって変わります税抜経理方式を選んでいる課税事業者は税抜額で判定(消費税込み103,000円でも税抜93,636円なら消耗品費でOK)。税込経理方式を選んでいる場合は税込額で判定します。インボイス未登録の免税事業者は税込経理しか選べないため、必ず税込額で判定することになります。迷ったら税理士か税務署に確認してください。

10万円未満のパソコン|消耗品費で全額経費にできる

10万円未満のパソコンは「少額の減価償却資産」として、購入した年に全額を経費に計上できます(所得税法施行令第138条)。勘定科目は「消耗品費」が一般的です。

5万円のノートパソコンを買ったなら、その年の経費に5万円まるごと入れるだけ。難しい計算は一切不要です。

青色申告者限定|少額減価償却資産の特例で30万円未満も一括経費にできる

青色申告をしている個人事業主には強力な特例があります。取得価額が10万円以上30万円未満のパソコンでも、購入した年に全額を必要経費に算入できる制度です。

根拠と適用期間

根拠条文は租税特別措置法第28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例)です。

令和8年度税制改正(2026年度)によって適用期限が令和11年3月31日まで延長されました。あわせて、令和8年4月1日以降に取得した資産については上限が30万円未満から40万円未満に拡大されています。

⚠️ 【確認が必要な情報】
令和8年度改正による「40万円未満への拡大」は2026年4月1日以降の取得分から適用されます。2025年分確定申告(令和7年分)では旧基準(30万円未満)が適用されます。最新情報は必ず国税庁ウェブサイトでご確認ください。

特例を使う3つの要件

  1. 青色申告者であること(白色申告者は適用不可)
  2. 常時使用する従業員が400人以下であること(令和8年4月以降の改正後)
  3. 年間合計取得価額が300万円以内であること(超えた分は通常の減価償却)

フリーランスの大多数は従業員を抱えていないか、いても数人規模。ほぼ全員が要件を満たします。

青色申告の届出をまだ出していない方は、今年中に開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出してください。翌年分から適用できます。

減価償却が必要な場合|パソコンの耐用年数4年・定額法の計算方法

特例が使えない白色申告者や、取得価額が30万円以上(令和8年4月以降は40万円以上)のパソコンは、通常の減価償却が必要です。

パソコンの耐用年数は4年

パソコンの法定耐用年数は4年です(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一「器具及び備品」の「電子計算機」。ただしサーバー用は5年)。ノートパソコン・デスクトップパソコン本体ともに4年が基本です。

個人事業主の減価償却は原則として定額法です。毎年同じ金額を経費にする方法で、計算はシンプルです。

定額法の計算式

年間減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率(耐用年数4年 → 0.250)

具体例:50万円のパソコンを12月に購入した場合

購入金額50万円、耐用年数4年(償却率0.250)として計算します。

年度 年間償却費 月割り(12月購入) 未償却残高
1年目(12月購入) 125,000円 10,416円(1か月分) 489,584円
2年目 125,000円 125,000円(12か月分) 364,584円
3年目 125,000円 125,000円 239,584円
4年目 125,000円 125,000円 114,584円
5年目(残余) 114,583円(残月分) 1円(備忘価額)

月の途中で購入した場合も、購入した月から月割り計算します。12月に買えばその年の経費は1か月分だけ。1月に買えば12か月分まるごと経費になります。年末に慌てて買っても節税効果は限定的なので注意してください。

仕訳例と勘定科目

パターン①:10万円未満(消耗品費)

例:税抜8万円のノートパソコン購入(税抜経理の場合)

借方:消耗品費 80,000円 / 貸方:現金(または普通預金)80,000円

パターン②:少額減価償却資産の特例(青色申告者・10万円以上30万円未満)

例:税抜15万円のノートパソコン購入

【購入時】
借方:工具器具備品 150,000円 / 貸方:現金(または普通預金)150,000円

【期末(決算)】
借方:減価償却費 150,000円 / 貸方:工具器具備品 150,000円
(特例により全額を当年の減価償却費として計上)

青色申告会の窓口では「消耗品費で直接入れてしまった」という人が多かったのですが、正確には固定資産台帳に登録した上で、特例を使って全額を減価償却費として計上するのが正しい処理です。会計ソフトを使えば自動的に正しい仕訳になります。

パターン③:通常の減価償却(30万円以上)

例:税抜50万円のデスクトップパソコン購入

【購入時】
借方:工具器具備品 500,000円 / 貸方:現金(または普通預金)500,000円

【期末(1年目・1月購入の場合)】
借方:減価償却費 125,000円 / 貸方:工具器具備品 125,000円

固定資産台帳への登録が必要です。毎年の減価償却費と未償却残高を管理します。

freee・マネーフォワード・やよいでの処理方法

手計算で固定資産台帳を管理するのは正直しんどい。会計ソフトを使えば、取得日・取得価額・耐用年数を入力するだけで自動計算してくれます。

freee会計での設定

「固定資産台帳」メニューから新規登録します。「少額減価償却資産の特例を使う」チェックボックスがあるので、青色申告者は忘れずにチェックを入れてください。登録すると仕訳も自動で作成されます。

マネーフォワード クラウド確定申告での設定

「固定資産」メニューから登録します。取得価額・耐用年数・償却方法(定額法)を入力すると、年次の減価償却費が自動で計算されます。少額減価償却資産の特例も選択できます。

やよいの青色申告 オンラインでの設定

「固定資産の管理」から資産を登録します。「中小企業者の少額減価償却資産の特例」の選択肢があります。確定申告書への転記も自動なので、計算ミスを防げます。

業務専用 vs 家事按分|プライベートと兼用のパソコンはどうする?

仕事と私用の両方でパソコンを使っている場合、全額を経費にするのはNGです。業務使用割合に応じて按分する必要があります(家事按分)。

たとえば「1日8時間のうち仕事で6時間使う」なら業務割合は75%。15万円のパソコンなら15万円×75%=11.25万円が経費です。

青色申告会でよく見てきたのが「仕事専用のつもりで全額経費にしたが、実態は子どものゲームや動画視聴にも使っていた」というケース。税務調査で問われると按分の根拠を求められます。業務と私用の区別が難しければ、メモや利用ログを残しておくと安心です。

仕事専用として購入したパソコンであれば、按分不要で全額経費にできます。「業務専用」と言い切れる根拠があるかどうかが判断の分かれ目です。

家事按分の詳しい計算方法はフリーランスが経費にできるもの一覧の記事もあわせて参照してください。

まとめ|パソコンの経費処理は「金額」と「申告方法」で決まる

パソコンの経費処理で迷ったときのチェックポイントを整理します。

  • 10万円未満(税抜経理は税抜額・税込経理は税込額で判定)→ 消耗品費で全額その年の経費(誰でも可)
  • 10万円以上30万円未満(令和8年4月以降は40万円未満)(判定方法は上記と同様)→ 青色申告者なら少額減価償却資産の特例で全額その年の経費
  • それ以外→ 耐用年数4年・定額法で減価償却(償却率0.250)
  • 仕事とプライベート兼用の場合は業務使用割合で按分
  • 固定資産台帳への登録を忘れない

青色申告の少額減価償却資産の特例は、フリーランスが使える節税手段の中でも即効性が高い制度です。まだ白色申告の方は、開業届と青色申告承認申請書の提出を検討する価値があります。

計算・仕訳・固定資産台帳の管理は、会計ソフトに任せてしまうのがいちばん楽です。

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