家事按分とは?計算方法と勘定科目を解説

経費・節税

最終更新日:2026年6月4日

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この記事を書いた人: 元青色申告会職員として17年間、年間500人以上の個人事業主・フリーランスの確定申告を現場で直接サポートしてきました。記帳指導・会計ソフト指導・労働保険事務・損害保険・生命保険業務を担当。

「在宅で仕事しているんだけど、家賃って経費にできるの?」

青色申告会の窓口でいちばんよく聞かれた質問の一つです。答えはYES、できます。ただし「全額」ではなく「仕事に使っている割合だけ」です。この仕組みが家事按分(かじあんぶん)です。

やり方を知らずに全額を経費にしてしまうと税務調査で否認されるリスクがあり、逆に何もしないと本来取れるはずの節税機会を丸ごと逃します。17年間、年間500人以上の個人事業主の申告をサポートしてきた経験から、実務で使える家事按分の知識をまとめます。

家事按分とは?「家事関連費」を仕事の割合だけ経費にする仕組み

家事按分の根拠は所得税基本通達45-1(家事関連費)です。通達では、家事と事業の両方に使う支出(家事関連費)について、「業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合に限り、その区分された金額を必要経費に算入できる」と定めています。

要するに「どの割合で仕事に使っているかを合理的に説明できれば、その分だけ経費にしていい」ということです。

在宅ワーカーが按分できる主な費用は次の3つです。

  • 家賃(地代家賃)
  • 電気・ガス・水道代(水道光熱費)
  • インターネット・スマホ代(通信費)

このほか、自動車をビジネスと私用で兼用している場合のガソリン代・車検費用なども対象になりますが、本記事では在宅ワーカーが最も使う上記3つに絞って解説します。

家事按分の計算方法|家賃・光熱費・通信費それぞれの計算式

① 家賃の計算方法(面積按分)

家賃は「仕事専用スペースの面積 ÷ 自宅全体の面積」で按分します。面積は㎡でも畳数でも構いません。数字で説明できる面積按分が、税務署からも最も受け入れられやすい方法です。

按分割合(%)= 仕事スペースの面積 ÷ 自宅全体の面積 × 100
経費算入額 = 月額家賃 × 按分割合

② 電気代の計算方法(時間按分または面積按分)

電気代は「1日のうち仕事に使う時間 ÷ 24時間」か、家賃と同じ面積按分のどちらかを使います。どちらか一方を選んだら年間通して同じ基準を使い続けることが原則です。

【時間按分の場合】
1日の仕事時間 ÷ 24時間 × 100 = 按分割合(%)

【面積按分の場合】
仕事スペースの面積 ÷ 自宅全体の面積 × 100 = 按分割合(%)

ガス代・水道代は業務での使用がほぼない場合は経費計上しないケースも多いです。使用実態に合わせて判断してください。

③ 通信費(インターネット・スマホ)の計算方法(時間按分)

インターネット回線は「1日のうち仕事で使う時間の割合」で按分します。スマホはさらに「業務連絡・業務調査に使う時間」と「プライベートの利用時間」を分けて考えます。

仕事利用時間 ÷ 1日の総利用時間 × 100 = 按分割合(%)

スマホは完全にプライベートと兼用であれば50%以下が実態に合っているケースが多いです。「90%業務用」などの高い割合を設定すると税務調査で根拠を求められた際に説明が難しくなります。

家事按分の計算例|売上300万・自宅20畳・仕事スペース4畳のケース

具体的な数字で見てみましょう。

  • 売上高:300万円
  • 自宅の広さ:20畳(LDK・寝室・仕事部屋)
  • 仕事専用スペース:4畳(書斎として完全に仕事用)
  • 月額家賃:80,000円
  • 月額電気代:10,000円
  • 月額インターネット料金:5,000円
  • 1日の仕事時間:8時間(1日の稼働を8時間と設定)

按分割合の計算

費目 按分基準 按分割合 月額経費 年額経費
家賃 4畳 ÷ 20畳 20% 16,000円 192,000円
電気代 8時間 ÷ 24時間 33% 3,300円 39,600円
インターネット 8時間 ÷ 24時間 33% 1,650円 19,800円
年間経費合計 251,400円

このケースでは何もしなければ0円だった経費が、家事按分を使うだけで年間約25万円の経費になります。所得税・住民税の税率を合わせて30%とすると、約75,000円の節税効果です。家事按分を知っているか知らないかで、手元に残るお金が大きく変わります。

家事按分の勘定科目と仕訳例

家事按分は「費用の全額をいったん記帳し、プライベート分を事業主貸に振り替える」方法と「最初から按分後の金額だけ経費計上する」方法の2つがあります。会計ソフトを使う場合は前者が一般的です。

勘定科目の対応表

費目 勘定科目
家賃 地代家賃
電気・ガス・水道代 水道光熱費
インターネット・スマホ代 通信費
プライベート分(振替) 事業主貸

仕訳例(家賃80,000円・按分20%のケース)

【方法①:全額計上してからプライベート分を振り替える】

借方 金額 貸方 金額 摘要
地代家賃 80,000円 普通預金 80,000円 〇月家賃
事業主貸 64,000円 地代家賃 64,000円 家事按分(80%)

結果として、地代家賃の残高は16,000円(=80,000円 × 20%)になります。

【方法②:最初から按分後の金額だけ計上する】

借方 金額 貸方 金額 摘要
地代家賃 16,000円 普通預金 16,000円 〇月家賃(按分20%)
事業主貸 64,000円 普通預金 64,000円 〇月家賃(家事分80%)

どちらの方法でも最終的な所得計算の結果は同じです。会計ソフトを使うなら方法①(自動振替設定)が作業効率の面でおすすめです。

freee・マネーフォワード・やよいで家事按分を設定する方法

freee会計の場合

freeeは「確定申告」メニューの中に「家事按分」の専用設定画面があります。勘定科目ごとに按分割合(%)を入力すると、年次決算のタイミングで自動的に「事業主貸」への振替仕訳が作成されます。毎月手作業で仕訳を入れる必要がなく、設定は年1回で済むのが大きなメリットです。

マネーフォワードクラウド確定申告の場合

「確定申告」→「家事按分設定」から、勘定科目と事業用比率(%)を登録します。登録後は決算時に按分後の金額が自動反映されます。銀行明細の自動取得と組み合わせると、入力の手間がほぼゼロになります。

やよいの青色申告オンラインの場合

やよいは取引入力の際に「家事按分」の比率を直接指定する方式です。取引ごとに按分割合を入力し、プライベート分は自動的に「事業主貸」に振り分けられます。シンプルな操作感で、簿記の知識がなくても直感的に使えます。

家事按分の計算方法で税務署に否認されないための3条件

17年の現場経験で見てきた中で、税務調査で按分費用が否認されるケースには共通のパターンがあります。以下の3条件を満たしていれば、否認リスクはかなり下がります。

条件1:按分割合に「合理的な根拠」があること

「なんとなく50%にした」ではなく、「仕事スペースが4畳で全体が20畳だから20%にした」「1日8時間仕事をするから33%にした」という数字の根拠を示せることが必要です。根拠があれば、100%の按分でなくても構いません。

青色申告会の窓口で見てきた中で、説明できない高い按分割合(家賃80%など)は否認されやすい傾向がありました。

条件2:仕事スペースが実際に業務専用になっていること

「書斎として使っているけど、週末は子供の遊び場にもなっている」という状況で全額を業務専用として按分するのはリスクがあります。完全に仕事専用でないスペースは、その実態に合った割合にとどめるべきです。

「専用スペースがない」という場合は、LDKの一角で仕事をしている時間割合(時間按分)で計算するのが現実的です。

条件3:領収書・明細書を保存していること

家賃の賃貸借契約書・光熱費の明細・通信費の請求書は7年間保存が原則です(青色申告の場合)。これらが手元にないと、按分計算自体の根拠が崩れます。電子帳簿保存法の対応も含め、デジタル保存を習慣にしてください。

⚠️ 【確認が必要な情報】
按分割合の具体的な上限については税法上の明示的な規定はなく、「合理性・実態」で判断されます。不安な場合は申告前に税理士または青色申告会に相談することをおすすめします。最新の運用については国税庁ウェブサイトでご確認ください。

まとめ|家事按分は「根拠」さえ作れば怖くない

家事按分のポイントをまとめると以下のとおりです。

  • 根拠:所得税基本通達45-1。合理的に区分できれば経費算入OK
  • 家賃は面積按分(仕事スペース÷全体面積)が最も説明しやすい
  • 電気・通信費は時間按分(仕事時間÷24時間)が一般的
  • 按分割合は「合理的な根拠」があれば税務署も認める
  • 会計ソフトの按分設定を使えば毎月の作業は不要になる
  • 領収書・契約書は7年保存が原則

自宅で働いているフリーランス・個人事業主にとって、家事按分は最も身近な節税手段の一つです。「難しそう」と避けていた方も、会計ソフトを使えば設定は数分で終わります。まずは自分の仕事スペースの面積を測ってみるところから始めてみてください。

家事按分の設定は会計ソフトにお任せ

家事按分の計算・振替仕訳は会計ソフトが自動でやってくれます。確定申告の手間を大幅に減らしたい方はこちらから。

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