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「去年、結構病院に通ったのに確定申告で医療費の申請をすっかり忘れた……」
こういう話、青色申告会の窓口でよく聞きました。申告期限が終わった3月下旬、「やっぱり申請できませんよね」と来られる方が毎年必ずいたんです。実は5年以内なら更正の請求で取り戻せるのですが、それはまた別の話。
今年こそ損をしないために、この記事では医療費控除とセルフメディケーション税制の違いをわかりやすく整理します。どちらが使えるのか、どちらがお得なのかを実際の計算例で比べますので、確定申告の準備にそのまま使ってください。
医療費控除とセルフメディケーション税制、基本の違いは?
まず全体像を表で確認しましょう。ここさえ押さえれば、あとの話がすんなり入ってきます。
| 医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
|---|---|---|
| 根拠法令 | 所得税法第73条 | 租税特別措置法第41条の17の2 |
| 対象 | 病院・歯科の治療費、処方薬、通院交通費など | 対象のOTC医薬品(市販薬)のみ |
| 控除額の計算 | (医療費合計 − 保険金等) − 10万円 | (OTC医薬品合計 − 保険金等) − 1.2万円 |
| 控除上限 | 200万円 | 8.8万円 |
| 適用条件 | 年間医療費が10万円超(所得が200万円未満は所得の5%超) | 特定健診・予防接種等を年内に受けていること |
| 特記事項 | ― | 医療費控除との併用不可(どちらか一方を選択) |
一番大事なのは最後の行です。どちらか一方しか選べません。両方申請しようとしても、税務署で片方は弾かれます。
医療費控除:対象になるもの・ならないものの実例
窓口でよく質問を受けた「これって対象になりますか?」を実例でまとめます。
対象になるもの
- 病院・診療所・歯科医院への支払い(保険診療・自由診療ともに対象)
- 医師・歯科医師の処方による調剤薬局の薬代
- ドラッグストアで購入した市販薬(治療・療養のために必要と認められるもの)
- 病院への通院交通費(電車・バスなど公共交通機関)
- 入院時の部屋代・食事代(差額ベッド代は含む)
- 出産費用(妊婦健診・分娩費・入院費)
- インプラント・矯正歯科(治療目的のもの)
- 介護老人保健施設の自己負担分
対象にならないもの
- 健康診断・人間ドックの費用(ただし異常が見つかり治療に進んだ場合は対象)
- 美容整形・審美歯科(ホワイトニング等)
- ビタミン剤・栄養ドリンクなど(医師の処方なし)
- 通院時の自家用車ガソリン代・駐車場代
- タクシー代(公共交通機関が使えない事情がある場合を除く)
- 予防接種・インフルエンザワクチン代
- 眼鏡・コンタクトレンズ代(治療用は対象)
⚠️ 【現場の補足】
インプラントと矯正歯科は金額が大きいので「対象になりますか?」とよく聞かれます。どちらも治療目的なら対象、見た目を良くするための審美目的なら対象外です。「子どもの成長のための歯列矯正」は対象になります(国税庁No.1128参照)。
大切なのが生計を一にする家族全員分を合算できるという点。自分だけでは10万円に届かなくても、配偶者や子どもの医療費を合計すると超えることがよくあります。一人で抱え込まず、家族全員の領収書をまとめておきましょう。
セルフメディケーション税制:対象OTC医薬品の選び方
この制度、正直なところ「知ってる人だけ得をしている」制度です。ドラッグストアで市販薬を買うだけで節税できるのに、申告している人がまだ少ない。
そもそもスイッチOTC医薬品とは
もともと医師の処方箋が必要だった医薬品成分を、薬局で買えるよう転用(スイッチ)したものです。ロキソニンSやイブプロフェンなど、名前を聞いたことがある薬が多く含まれています。
対象品の見分け方
購入するときはパッケージか領収書の確認が一番確実です。
- パッケージの識別マーク:対象OTC医薬品の多くにセルフメディケーション税制の対象マークが印刷されています(義務ではないため、ないものもある)
- 領収書の記載:ドラッグストアによっては領収書に「★」や「セルフ税制対象」と印字される
- 厚生労働省のリスト:厚労省が対象成分・対象品目のリストを公開している(毎年更新)
代表的な対象薬の例
- 解熱鎮痛薬:ロキソニンS、イブプロフェン系、アスピリン系
- かぜ薬:パブロン・ルルなど(スイッチOTC成分含有のもの)
- 胃腸薬:ファモチジン含有薬(ガスター10など)
- アレルギー用薬:クラリチンEX、アレグラFXなど
- 外用鎮痛消炎薬:ボルタレンゲル(スイッチOTC品)
⚠️ 【注意:2026年からの変更点】
2026年1月1日以降、スイッチOTC医薬品であっても特定の成分(L-アスパラギン酸カルシウム、フッ化ナトリウム、メコバラミン、ユビデカレノン)を含む製品はセルフメディケーション税制の対象外となります。最新情報は必ず国税庁ウェブサイトでご確認ください。
適用条件:健診等を受けていることが必須
セルフメディケーション税制を使うには、その年に以下のいずれかを受けている必要があります。
- 特定健康診査(メタボ健診)・特定保健指導
- 人間ドック・各種健診
- 市区町村のがん検診
- インフルエンザ等の予防接種
- 勤務先の定期健康診断
フリーランス・個人事業主の場合、会社の定期健診はないので、国民健康保険の特定健診か、自費で人間ドックを受ける方が多いです。「市販薬をよく買うけど健診を受けていない」という方は、来年の予防のためにも健診の受診を検討してみてください。
どちらを選ぶべきか?計算例で比較
実際の数字で比べてみます。
ケース1:病院代が多くかかった年
条件:年間医療費15万円(病院・薬・通院交通費)、OTC医薬品2万円、保険金等なし、所得税率20%
| 医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
|---|---|---|
| 控除額の計算 | 15万円 − 10万円 = 5万円 | 2万円 − 1.2万円 = 0.8万円 |
| 節税額(税率20%の場合) | 5万円 × 20% = 1万円 | 8,000円 × 20% = 1,600円 |
→ 医療費控除を選ぶべき。差額は8,400円。
ケース2:病院にはほとんど行かず、市販薬をよく買った年
条件:年間医療費3万円(ほぼ市販薬)のうちOTC対象薬が2.5万円、保険金等なし、所得税率20%
| 医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
|---|---|---|
| 控除額の計算 | 3万円 − 10万円 = 控除なし(マイナスは0) | 2.5万円 − 1.2万円 = 1.3万円 |
| 節税額(税率20%の場合) | 0円 | 1.3万円 × 20% = 2,600円 |
→ セルフメディケーション税制を選ぶべき。医療費控除の条件(10万円超)を満たさない年でも、OTC医薬品が1.2万円を超えれば控除が受けられます。
選ぶ基準のまとめ
- 病院・治療費が年間10万円を超えた年 → 医療費控除が有利なことが多い
- 病院代は少なく、市販薬の購入が多い年 → セルフメディケーション税制が有利
- どちらも条件を満たす年 → 両方計算して控除額が大きい方を選ぶ
確定申告での申請方法と会計ソフトでの入力
必要書類の準備
医療費控除の場合
- 医療費控除の明細書(確定申告書に添付)
- 領収書・医療費通知書(提出不要だが5年間自宅保管が必要)
セルフメディケーション税制の場合
- 明細書(購入した対象OTC医薬品の名称・金額を記載)
- 健診等を受けたことを明らかにする書類(健診結果通知書・領収書等)のコピー
- OTC医薬品の領収書(5年間保管)
会計ソフトでの入力の流れ
freee・マネーフォワード・やよいの青色申告いずれも、確定申告書の作成画面に「医療費控除」の入力欄があります。
- 確定申告書の作成画面を開く
- 「所得控除」→「医療費控除」を選択
- 「通常の医療費控除」か「セルフメディケーション税制」を選択(ここで必ずどちらか一方を選ぶ)
- 支払った医療費の合計額・保険金等の補填額を入力
- 明細書を出力・添付して申告書を完成させる
会計ソフトを使えば控除額の計算は自動でやってくれます。「医療費控除とセルフメディケーション税制、どちらが有利か」を比較計算してくれるソフトもあります。
手書きで申告する方は国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)が無料で使えます。入力フォームに沿って進めるだけなので、慣れれば30〜40分で完成します。
まとめ:どちらを選べばいいか迷ったら計算が一番
医療費控除とセルフメディケーション税制の違いを改めて整理します。
- 医療費控除は病院・治療費が主な対象。年間10万円を超えると使える
- セルフメディケーション税制は対象の市販薬のみが対象。年間1.2万円を超えると使える
- 両方は選択制。併用はできない
- どちらが得かは年ごとに変わる。両方計算して大きい方を選ぶのが正解
医療費控除以外にも、確定申告で見落としやすい控除がいくつかあります。→確定申告で控除漏れしやすい5つの控除もあわせてご覧ください。
私が窓口で17年見てきた中で一番多かったミスは「申請できることを知らなかった」でした。医療費の領収書はとにかく捨てずに取っておく。それだけで年間数千円〜数万円の節税につながります。
会計ソフトを使えば計算も入力も格段にラクになります。まだ使っていない方は、この機会に試してみてください。
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元青色申告会職員(17年)の運営者が、エンジニアでなくてもできるAI活用術をnoteで連載しています。
→ note「Claude Code非エンジニア実践記」を読む


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