医療費控除とセルフメディケーション税制の違い

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医療費控除とセルフメディケーション税制の違い

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この記事を書いた人: 元青色申告会職員として17年間、年間500人以上の個人事業主・フリーランスの確定申告を現場で直接サポートしてきました。記帳指導・会計ソフト指導・労働保険事務・損害保険・生命保険業務を担当。

「去年、結構病院に通ったのに確定申告で医療費の申請をすっかり忘れた……」

こういう話、青色申告会の窓口でよく聞きました。申告期限が終わった3月下旬、「やっぱり申請できませんよね」と来られる方が毎年必ずいたんです。実は5年以内なら更正の請求で取り戻せるのですが、それはまた別の話。

今年こそ損をしないために、この記事では医療費控除セルフメディケーション税制の違いをわかりやすく整理します。どちらが使えるのか、どちらがお得なのかを実際の計算例で比べますので、確定申告の準備にそのまま使ってください。


医療費控除とセルフメディケーション税制、基本の違いは?

まず全体像を表で確認しましょう。ここさえ押さえれば、あとの話がすんなり入ってきます。

医療費控除 セルフメディケーション税制
根拠法令 所得税法第73条 租税特別措置法第41条の17の2
対象 病院・歯科の治療費、処方薬、通院交通費など 対象のOTC医薬品(市販薬)のみ
控除額の計算 (医療費合計 − 保険金等) − 10万円 (OTC医薬品合計 − 保険金等) − 1.2万円
控除上限 200万円 8.8万円
適用条件 年間医療費が10万円超(所得が200万円未満は所得の5%超) 特定健診・予防接種等を年内に受けていること
特記事項 医療費控除との併用不可(どちらか一方を選択)

一番大事なのは最後の行です。どちらか一方しか選べません。両方申請しようとしても、税務署で片方は弾かれます。


医療費控除:対象になるもの・ならないものの実例

窓口でよく質問を受けた「これって対象になりますか?」を実例でまとめます。

対象になるもの

  • 病院・診療所・歯科医院への支払い(保険診療・自由診療ともに対象)
  • 医師・歯科医師の処方による調剤薬局の薬代
  • ドラッグストアで購入した市販薬(治療・療養のために必要と認められるもの)
  • 病院への通院交通費(電車・バスなど公共交通機関)
  • 入院時の部屋代・食事代(差額ベッド代は含む)
  • 出産費用(妊婦健診・分娩費・入院費)
  • インプラント・矯正歯科(治療目的のもの)
  • 介護老人保健施設の自己負担分

対象にならないもの

  • 健康診断・人間ドックの費用(ただし異常が見つかり治療に進んだ場合は対象
  • 美容整形・審美歯科(ホワイトニング等)
  • ビタミン剤・栄養ドリンクなど(医師の処方なし)
  • 通院時の自家用車ガソリン代・駐車場代
  • タクシー代(公共交通機関が使えない事情がある場合を除く)
  • 予防接種・インフルエンザワクチン代
  • 眼鏡・コンタクトレンズ代(治療用は対象)

⚠️ 【現場の補足】
インプラントと矯正歯科は金額が大きいので「対象になりますか?」とよく聞かれます。どちらも治療目的なら対象、見た目を良くするための審美目的なら対象外です。「子どもの成長のための歯列矯正」は対象になります(国税庁No.1128参照)。

大切なのが生計を一にする家族全員分を合算できるという点。自分だけでは10万円に届かなくても、配偶者や子どもの医療費を合計すると超えることがよくあります。一人で抱え込まず、家族全員の領収書をまとめておきましょう。


セルフメディケーション税制:対象OTC医薬品の選び方

この制度、正直なところ「知ってる人だけ得をしている」制度です。ドラッグストアで市販薬を買うだけで節税できるのに、申告している人がまだ少ない。

そもそもスイッチOTC医薬品とは

もともと医師の処方箋が必要だった医薬品成分を、薬局で買えるよう転用(スイッチ)したものです。ロキソニンSやイブプロフェンなど、名前を聞いたことがある薬が多く含まれています。

対象品の見分け方

購入するときはパッケージか領収書の確認が一番確実です。

  • パッケージの識別マーク:対象OTC医薬品の多くにセルフメディケーション税制の対象マークが印刷されています(義務ではないため、ないものもある)
  • 領収書の記載:ドラッグストアによっては領収書に「★」や「セルフ税制対象」と印字される
  • 厚生労働省のリスト:厚労省が対象成分・対象品目のリストを公開している(毎年更新)

代表的な対象薬の例

  • 解熱鎮痛薬:ロキソニンS、イブプロフェン系、アスピリン系
  • かぜ薬:パブロン・ルルなど(スイッチOTC成分含有のもの)
  • 胃腸薬:ファモチジン含有薬(ガスター10など)
  • アレルギー用薬:クラリチンEX、アレグラFXなど
  • 外用鎮痛消炎薬:ボルタレンゲル(スイッチOTC品)

⚠️ 【注意:2026年からの変更点】
2026年1月1日以降、スイッチOTC医薬品であっても特定の成分(L-アスパラギン酸カルシウム、フッ化ナトリウム、メコバラミン、ユビデカレノン)を含む製品はセルフメディケーション税制の対象外となります。最新情報は必ず国税庁ウェブサイトでご確認ください。

適用条件:健診等を受けていることが必須

セルフメディケーション税制を使うには、その年に以下のいずれかを受けている必要があります。

  • 特定健康診査(メタボ健診)・特定保健指導
  • 人間ドック・各種健診
  • 市区町村のがん検診
  • インフルエンザ等の予防接種
  • 勤務先の定期健康診断

フリーランス・個人事業主の場合、会社の定期健診はないので、国民健康保険の特定健診か、自費で人間ドックを受ける方が多いです。「市販薬をよく買うけど健診を受けていない」という方は、来年の予防のためにも健診の受診を検討してみてください。


どちらを選ぶべきか?計算例で比較

実際の数字で比べてみます。

ケース1:病院代が多くかかった年

条件:年間医療費15万円(病院・薬・通院交通費)、OTC医薬品2万円、保険金等なし、所得税率20%

医療費控除 セルフメディケーション税制
控除額の計算 15万円 − 10万円 = 5万円 2万円 − 1.2万円 = 0.8万円
節税額(税率20%の場合) 5万円 × 20% = 1万円 8,000円 × 20% = 1,600円

医療費控除を選ぶべき。差額は8,400円。

ケース2:病院にはほとんど行かず、市販薬をよく買った年

条件:年間医療費3万円(ほぼ市販薬)のうちOTC対象薬が2.5万円、保険金等なし、所得税率20%

医療費控除 セルフメディケーション税制
控除額の計算 3万円 − 10万円 = 控除なし(マイナスは0) 2.5万円 − 1.2万円 = 1.3万円
節税額(税率20%の場合) 0円 1.3万円 × 20% = 2,600円

セルフメディケーション税制を選ぶべき。医療費控除の条件(10万円超)を満たさない年でも、OTC医薬品が1.2万円を超えれば控除が受けられます。

選ぶ基準のまとめ

  • 病院・治療費が年間10万円を超えた年 → 医療費控除が有利なことが多い
  • 病院代は少なく、市販薬の購入が多い年 → セルフメディケーション税制が有利
  • どちらも条件を満たす年 → 両方計算して控除額が大きい方を選ぶ

確定申告での申請方法と会計ソフトでの入力

必要書類の準備

医療費控除の場合

  • 医療費控除の明細書(確定申告書に添付)
  • 領収書・医療費通知書(提出不要だが5年間自宅保管が必要)

セルフメディケーション税制の場合

  • 明細書(購入した対象OTC医薬品の名称・金額を記載)
  • 健診等を受けたことを明らかにする書類(健診結果通知書・領収書等)のコピー
  • OTC医薬品の領収書(5年間保管)

会計ソフトでの入力の流れ

freeeマネーフォワードやよいの青色申告いずれも、確定申告書の作成画面に「医療費控除」の入力欄があります。

  1. 確定申告書の作成画面を開く
  2. 「所得控除」→「医療費控除」を選択
  3. 「通常の医療費控除」か「セルフメディケーション税制」を選択(ここで必ずどちらか一方を選ぶ)
  4. 支払った医療費の合計額・保険金等の補填額を入力
  5. 明細書を出力・添付して申告書を完成させる

会計ソフトを使えば控除額の計算は自動でやってくれます。「医療費控除とセルフメディケーション税制、どちらが有利か」を比較計算してくれるソフトもあります。

手書きで申告する方は国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)が無料で使えます。入力フォームに沿って進めるだけなので、慣れれば30〜40分で完成します。


まとめ:どちらを選べばいいか迷ったら計算が一番

医療費控除とセルフメディケーション税制の違いを改めて整理します。

  • 医療費控除は病院・治療費が主な対象。年間10万円を超えると使える
  • セルフメディケーション税制は対象の市販薬のみが対象。年間1.2万円を超えると使える
  • 両方は選択制。併用はできない
  • どちらが得かは年ごとに変わる。両方計算して大きい方を選ぶのが正解

医療費控除以外にも、確定申告で見落としやすい控除がいくつかあります。→確定申告で控除漏れしやすい5つの控除もあわせてご覧ください。

私が窓口で17年見てきた中で一番多かったミスは「申請できることを知らなかった」でした。医療費の領収書はとにかく捨てずに取っておく。それだけで年間数千円〜数万円の節税につながります。

会計ソフトを使えば計算も入力も格段にラクになります。まだ使っていない方は、この機会に試してみてください。

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