従業員を雇ったら|源泉徴収と納期の特例ガイド

確定申告の基本

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この記事を書いた人: 確定申告サポート歴17年。年間500人以上の個人事業主・フリーランスの確定申告を現場で直接サポートしてきました。記帳指導・会計ソフト指導・労働保険・損害保険・生命保険業務を担当。

「スタッフを1人雇ったんですが、給与から何か引くんでしたっけ?」——青色申告会の窓口でよく聞かれた質問です。個人事業主でも従業員や家族(専従者)に給与を払い始めた瞬間から、源泉徴収義務者になります。

源泉徴収をしていなかった、納付期限を知らなかった——こうしたケースが窓口では年に何件も来ていました。後から気づいて一括納付になると、延滞税・不納付加算税がついてくる。知っておけば防げるミスです。

この記事では、個人事業主が従業員・専従者を雇ったときに必須の源泉徴収手続きを、順を追って解説します。

まず「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する

開業届を出してある個人事業主が初めて従業員を雇ったとき、もしくは青色専従者に給与を払い始めるときは、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を1か月以内に税務署に提出します。

この届出をしないと税務署が「給与を払い始めた事業者」として把握できず、後から納付漏れを指摘されるリスクがあります。開業届とは別の書類なので注意してください。

源泉徴収とは:給与から天引きして代わりに納める仕組み

従業員に給与を払う側(事業主)は、給与から所得税分を差し引いて、従業員の代わりに税務署に納める義務があります。これが源泉徴収です。

たとえば給与20万円の従業員に対して源泉徴収税額が5,000円なら、従業員への支払いは195,000円、残りの5,000円は翌月10日までに税務署に納めます。

源泉徴収税額の求め方

給与からの源泉徴収額は、国税庁が公表する「源泉徴収税額表」で決まります。月次支払の場合は「月額表」を使い、給与額と扶養家族の人数で引いた税額を天引きします。

税額表の「甲欄」を使うのが基本(「扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員)。提出がない場合は「乙欄」(税率が高め)で計算します。

区分 対象 税率の特徴
甲欄 「扶養控除等申告書」提出済みの従業員 低め(扶養人数が多いほど控除大)
乙欄 申告書を提出していない場合(副業・掛け持ち等) 高め(甲欄より多く天引きされる)

税額表は毎年改訂されます。正確な金額は国税庁公表の最新版で確認してください。

納付の原則:翌月10日までに納める

源泉徴収した所得税は、給与支払月の翌月10日までに最寄りの税務署・金融機関または e-Tax で納付します。

⚠️ 「納付書」は自動送付されない
源泉所得税の納付書(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)は、初回は税務署の窓口で入手するか、e-Tax で電子納付する必要があります。「送られてくるもの」と思い込んで期限を過ぎるケースが多いので注意してください。

従業員10人未満なら「納期の特例」が使える

毎月納付は手続きが多く、個人事業主には負担が大きい。そこで常時給与支給人数が10人未満の事業者は「納期の特例」を申請できます

この特例を使うと、毎月ではなく年2回まとめて納付できます。

対象期間 納付期限
1月〜6月分の源泉徴収税額 7月10日
7月〜12月分の源泉徴収税額 翌年1月20日

申請方法

  1. 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出
  2. 提出月の翌月末日に承認(却下の通知がなければ自動承認)
  3. 承認後、翌月に源泉徴収する分から特例が適用される

この申請書は税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のウェブサイトからも入手できます。

⚠️ 10人を超えたら翌月10日納付に戻る
特例の適用中に給与支給人数が常時10人以上になった場合、1か月以内に「納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出し、翌月10日納付に切り替える義務があります。超えているのに特例のまま放置すると法令違反です。

年末調整:1年間の所得税を精算する

毎月の源泉徴収はあくまで概算。扶養人数の変動・生命保険料控除・住宅ローン控除(初年度は確定申告が必要)などを考慮すると、年間の正確な税額とずれが生じます。この差額を12月の給与支払時に精算する手続きが年末調整です。

年末調整の基本的な流れ

  1. 11月頃: 従業員から「給与所得者の扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」等を回収
  2. 12月: 年間の源泉徴収合計額と年税額を比較し、過不足を計算
  3. 12月の給与: 払いすぎていれば還付、不足していれば追徴
  4. 翌年1月31日まで: 従業員全員に「給与所得の源泉徴収票」を交付

年末調整の対象となるのは、年末まで在籍している従業員で「扶養控除等申告書」を提出している人です。年の途中で退職した従業員は年末調整の対象外で、本人が確定申告します。

青色専従者(家族従業員)への給与も同じ扱い

配偶者や家族に給与を払っている場合(青色事業専従者)も、通常の従業員と同様に源泉徴収・年末調整が必要です。「家族だから源泉徴収しなくていい」は誤りです。

青色申告会の窓口でも、「妻への専従者給与から源泉徴収していなかった」というケースが毎年出てきました。事業主本人と同じ家計でも、給与支払の手続きは別建てです。

専従者給与の届出との関係

青色事業専従者に給与を払うには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。この届出書と、給与支払事務所等の開設届出書は別の書類です。両方提出してください。

まとめ

  • 従業員・専従者を雇った瞬間から源泉徴収義務者になる
  • 開設から1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署へ
  • 源泉徴収税額は「源泉徴収税額表」(甲欄・乙欄)で計算
  • 原則は給与支払月の翌月10日に納付
  • 常時10人未満なら「納期の特例」で年2回納付(7月10日・翌年1月20日)に変更可能
  • 毎年12月に年末調整で年間税額を精算、翌年1月31日までに源泉徴収票を交付
  • 青色専従者への給与も源泉徴収・年末調整が必要(家族だから不要ではない)

「一人雇ったくらいなら」と思っているうちに納付期限が連続して過ぎ、不納付加算税がまとまった金額になっていたケースを何度も見ました。雇ったその日に手続きを動かすのが正解です。

給与計算・源泉徴収の管理も会計ソフトが自動化してくれます。どれも無料期間があるので、実際に操作してから選んでください。

税理士に頼むと年間30〜50万円かかります。会計ソフトなら月1,000円前後で確定申告まで完結します。


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