最終更新日:2026年7月26日
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「去年の確定申告、思ったより税金が少なかった」
その感覚は正しいです。令和7年分(2025年1月〜12月の所得)から所得税の基礎控除が大幅に引き上げられ、確定申告の相談窓口でも「今年は還付が多かった」と驚くお客様が続出しました。
そして令和8年分(2026年1月〜12月の所得)から、基礎控除はさらに引き上げられて最大104万円になりました。令和8年度税制改正によるもので、法律はすでに成立しています。つまり、いま稼いでいる2026年の所得に対して、この104万円が使えます。
この記事では、令和8年分の正しい基礎控除額、売上別に前年からいくら税金が下がるのか、そして見落とすと数万円を損する「489万円の崖」と「住民税の基礎控除と国保の43万円は据え置き」という2つの注意点を整理します。
令和8年分の基礎控除は最大104万円|合計所得別の一覧表
基礎控除とは、ほとんどの納税者に適用される所得控除です。控除額は合計所得金額に応じて変わり、合計所得2,350万円を超えると段階的に縮小して2,500万円超では0円になります。計算のしくみは単純で、事業所得から社会保険料や各種控除を差し引いた後、さらに基礎控除を引いた残りが「課税所得」になります。
数年前まで基礎控除は合計所得2,400万円以下なら一律48万円でした。令和7年分から所得が低い人ほど控除が大きく増える「段階制」になり、令和8年分ではその上乗せがさらに拡大しました。
| 合計所得金額 | 令和8・9年分 (今ここ) |
令和10年分以後 | 令和7年分 (前回の申告) |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 104万円 | 99万円 | 95万円 |
| 132万円超〜336万円以下 | 104万円 | 62万円 | 88万円 |
| 336万円超〜489万円以下 | 104万円 | 62万円 | 68万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 67万円 | 62万円 | 63万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 62万円 | 62万円 | 58万円 |
| 2,350万円超〜2,400万円以下 | 48万円 | 48万円 | 48万円 |
| 2,400万円超 | 32万円 → 16万円と縮小し、2,500万円超で0円 | ||
ここで言う「合計所得金額」は、事業所得(売上から経費・青色申告特別控除を差し引いた後の金額)をベースに計算します。事業以外の収入がある場合はそれも合算します。
しくみとしては、基礎控除の本則が58万円から62万円に引き上げられ、そこに令和8・9年分だけの上乗せ(42万円・5万円)が乗る形です。だから令和10年分以後は、合計所得132万円以下では99万円、132万円超2,350万円以下では本則の62万円になります(2,350万円超は従来どおり段階的に縮小します)。
※合計所得2,350万円を超える区分は今回の改正の対象外で、従来どおりの金額です(国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」注4「合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません」)。
出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」/国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(PDF)
最初に押さえるべき注意点|住民税の基礎控除と国保の43万円は据え置き
ここを間違えると手取りの見込みが数十万円ずれます。窓口でも一番多い誤解でした。104万円に引き上げられたのは所得税の基礎控除だけです。
| 税・保険料 | 令和8年分の基礎控除にあたる額 |
|---|---|
| 所得税 | 最大104万円(引き上げられた) |
| 住民税 | 43万円(据え置き) |
| 国民健康保険料 | 43万円(据え置き) |
住民税の基礎控除は43万円のまま変わりません。「地域社会の会費」という住民税の性格から、所得税より低く設定されているためです。国民健康保険料も「総所得金額等−43万円」を算定のベースにしていて、この43万円は変わっていません。
そのため所得税が0円になっても、住民税と国民健康保険料はかかります。「基礎控除が104万円もあるから、所得100万円くらいなら何も払わない」と考えると資金計画が崩れます。
※住民税は令和8年分の所得に対して令和9年度に課税されます。現時点で基礎控除43万円を変更する改正は行われていません。なお国保は、この43万円が据え置きというだけで、保険料率や賦課限度額は自治体ごとに毎年見直されます。
出典:総務省「個人住民税の基礎控除等について」(令和8年5月29日・PDF)
売上別シミュレーション|前年からいくら税額が変わる?
「数字で見ないとピンとこない」——窓口でもよく言われます。令和7年分と令和8年分を並べて試算しました。
前提条件:青色申告(特別控除65万円)、社会保険料は各ケースで概算を設定。基礎控除以外の条件は令和7年分・令和8年分で同じにしています。住民税・復興特別所得税は含みません。
| 項目 | 売上200万円 | 売上300万円 | 売上500万円 | 売上700万円 |
|---|---|---|---|---|
| 経費(概算) | 30万円 | 60万円 | 100万円 | 150万円 |
| 青色申告特別控除 | 65万円(全ケース共通) | |||
| 事業所得(=合計所得金額) | 105万円 | 175万円 | 335万円 | 485万円 |
| 社会保険料控除(概算) | 40万円 | 50万円 | 60万円 | 75万円 |
| 基礎控除(令和7年分) | 95万円 | 88万円 | 88万円 | 68万円 |
| 基礎控除(令和8年分) | 104万円 | 104万円 | 104万円 | 104万円 |
| 課税所得(令和7年分) | 0円 | 37万円 | 187万円 | 342万円 |
| 課税所得(令和8年分) | 0円 | 21万円 | 171万円 | 306万円 |
| 所得税(令和7年分) | 0円 | 18,500円 | 93,500円 | 256,500円 |
| 所得税(令和8年分) | 0円 | 10,500円 | 85,500円 | 208,500円 |
| 前年からの減税額 | ±0円 (すでに0円) |
8,000円 | 8,000円 | 48,000円 |
※社会保険料は国民年金・国民健康保険の概算値で、実際の金額は居住地・前年所得によって異なります。金額はいずれも概算です(実際の申告では課税所得・税額に法定の端数処理があります)。住民税・復興特別所得税は含みません。
なお、48万円が一律だった令和6年分以前と比べると、減税額は売上300万円で28,000円、売上500万円で44,000円、売上700万円で88,000円になります。2回の改正が積み上がった結果です。計算のしくみをもう少し詳しく知りたい方は個人事業主の所得税の計算方法もあわせてご覧ください。
ポイント:基礎控除の引き上げ幅が最も大きいのは合計所得336万円超〜489万円以下の層
上の表で減税額が突出しているのは、売上700万円(事業所得485万円)のケースです。この層は令和7年分の基礎控除が68万円しかなかったため、104万円への引き上げ幅が36万円と最も大きくなります。
ただし、引き上げ幅が大きいからといって単純に「36万円×税率」で減税額が決まるわけではありません。このケースは課税所得が342万円から306万円に下がる過程で330万円の税率境界をまたぐため、36万円のうち12万円分は20%、残り24万円分は10%でしか効きません。結果、減税額は72,000円ではなく48,000円になります。実際の減税額は、社会保険料やその他の控除を引いた後の課税所得と税率で人それぞれ変わります。
一方、事業所得が655万円を超える層の引き上げ幅は58万円→62万円の4万円だけです。高所得のフリーランスほど「他の節税手段との組み合わせ」が重要になります(後述)。
見落とし注意|合計所得489万円の「崖」で約5.6万円変わる
令和8年分の基礎控除には、なだらかに減るのではなく段差で落ちるポイントがあります。合計所得489万円以下なら104万円、1円でも超えると67万円。37万円が一気に消えます。
・合計所得489万円 → 基礎控除104万円 → 課税所得310万円 → 所得税212,500円
・合計所得490万円 → 基礎控除67万円 → 課税所得348万円 → 所得税268,500円
→ 差額約56,000円。所得税だけで見ても、所得が1万円増えたのに手元に残るお金は約4.6万円減る計算です。
※前提条件によって差額は変わります。税率の区分(195万円・330万円)をまたぐかどうかで大きく動きます。
合計所得が489万円のすぐ上に着地しそうな年は、意識しておく価値があります。ただしすでに終わった仕事の請求書だけを遅らせて所得を翌年に移すことはできません。事業所得を計上する年は、納品・業務完了といった実態で決まるからです。調整の余地があるのは、新規案件の受注時期や、実態を伴う納品時期を選べる場合に限られます。
基礎控除の金額を判定するのは「合計所得金額」で、これは所得控除を引く前の金額です。iDeCo・小規模企業共済・社会保険料控除は所得控除なので、合計所得金額を下げません。
崖を避けたいなら、合計所得金額そのものを小さくする手段——経費の計上漏れをなくす、青色申告特別控除を使う——を先に確認してください。
令和10年分以後は本則62万円に戻る
104万円が使えるのは令和8年分と令和9年分の2年間です。令和10年分(2028年1月〜12月の所得)からは、上乗せ分がなくなり本則の62万円になります(合計所得132万円以下の人だけ99万円。2,350万円を超える人は今回の改正の対象外で従来どおりです)。
ただし「大幅な増税に戻る」わけではありません。改正前の本則は58万円でしたから、令和10年分以後も4万円は高い水準です。基礎控除は令和7年分・令和8年分と2年続けて見直されており、今後また改定される可能性もあります。
いずれにしても、上乗せが手厚い令和8年分・令和9年分のうちに、使える節税手段を整えておくのが有利です。
基礎控除と組み合わせたい節税手段3つ
基礎控除の引き上げは「何もしなくても控除が増える」改正です。ここに他の控除を積み増すと、課税所得をさらに圧縮できます。
① iDeCo・小規模企業共済で課税所得を下げる
iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済の掛金は、全額が所得控除になります。基礎控除が増えた分と合わせて課税所得を圧縮できます。
- iDeCo:自営業者は国民年金基金と合わせて月6.8万円(年81.6万円)まで全額所得控除。令和8年(2026年)12月から月7.5万円に引き上げられます。よく見る「年90万円」はこれを12か月フルに使った場合の年換算額で、年間を通して月7.5万円を使えるのは令和9年(2027年)からです
- 小規模企業共済:月1,000円〜7万円(年最大84万円)まで全額所得控除
両方フルで活用すると年間160万円超の所得控除が積み上がります。詳しくは→小規模企業共済とiDeCoの節税効果を徹底比較
出典:厚生労働省「私的年金制度、iDeCoの改正のポイント」(PDF)
② ふるさと納税で住民税まで同時に削る
ふるさと納税は所得税の還付と住民税の控除の両方に効きます。ただし控除の上限額は住民税の所得割をもとに決まり、その住民税の基礎控除は43万円のままです。つまり所得税の基礎控除が増えても、ふるさと納税の枠は増えません。
むしろ注意が必要なのは逆のケースです。基礎控除が増えたことで所得税の税率区分が下がった人は、上限額がやや下がります。上の売上700万円のケース(税率20%→10%)がまさにこれにあたり、上限額は約1割下がります。自分が該当するかどうかは、課税所得が195万円・330万円の境界をまたいだかで判断できます。「控除が増えたから枠も増えたはず」と考えて多めに申し込むと、自己負担が2,000円で収まりません。改正後の所得で計算し直してから申し込んでください。
→フリーランスのふるさと納税|控除上限の計算方法と確定申告のやり方
③ 国保に効くのは「所得控除」ではなく「所得そのもの」
ここは誤解が多いところです。国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されますが、その算定ベースは「総所得金額等−43万円」です(合計所得2,400万円以下の場合)。
つまりiDeCo・小規模企業共済・社会保険料控除・生命保険料控除などの所得控除は、国保の計算では一切引かれません。所得税と住民税は下がっても、国保料は下がらないのです。今回引き上げられた基礎控除104万円も、国保には影響しません。
国保料に効くのは、事業所得そのものを小さくする手段です。個人事業主がまず確認したいのは、必要経費の計上漏れと青色申告特別控除の2つになります。
まとめ:令和8年分は基礎控除104万円、住民税・国保の43万円は据え置き
- 令和8年分(2026年分)から所得税の基礎控除は最大104万円。合計所得489万円以下なら一律104万円
- 住民税の基礎控除43万円も、国保の算定上の43万円も据え置き。所得税が0円でも両方かかる
- 基礎控除の引き上げ幅が最も大きいのは合計所得336万円超〜489万円以下の層(68万円→104万円で36万円増)
- 合計所得489万円の段差に注意。1万円の所得差で所得税が約5.6万円変わることがある
- 104万円が使えるのは令和8年分・令和9年分の2年間。令和10年分以後は本則62万円に戻る
基礎控除の改正は「何もしなくても控除が増える」という珍しい改正です。とはいえ正しい控除額を適用するには、売上・経費・合計所得金額を正確に集計しておく必要があります。帳簿が整っていない方は今からでも遅くありません。
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