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「15万円のオンライン講座を受けた。これ、全額経費にしていいよね?」
17年間、青色申告会の窓口で年間500人以上の個人事業主・フリーランスの申告をサポートしてきました。スキルアップ費用の経費計上は、ここ数年で一気に相談が増えたテーマです。オンライン講座市場が拡大し、10万円・20万円単位のプログラムが当たり前になってきたからだと思います。
結論から言います。現在の事業・業務に関連する研修費やセミナー代は経費にできます。ただし「将来のために」「なんとなく役立ちそう」という理由では認められません。今回は現場で見てきた否認事例も交えながら、どこまで経費にできるかを具体的に解説します。
研修費 経費 フリーランスの判断基準|「今の仕事に関連するか」が全て
税務上、研修費やセミナー代が経費になるかどうかは、「現在営んでいる事業に直接関連するかどうか」で判断します。所得税法37条は必要経費を「その年分の各種所得の金額の計算上必要な費用」と定めており、現在の事業に関連しない支出は経費とは認められません。
この「現在の事業に関連するか」という基準が曖昧に見えるのですが、実務では次の問いで判断します。
- 今現在、その仕事・事業を営んでいるか
- その研修・セミナーの内容は、今の業務に直接役立つか
- 受講する前から業務として成立していたか(資格取得が開業の前提になっていないか)
3つ全部「はい」なら、基本的に経費になります。一つでも引っかかる場合は、記録と説明の準備が必要です。
経費になるもの・ならないもの
経費になるケース
Webデザイナーが受けるPhotoshopの使い方講座は典型的な経費です。現在の業務に直結しており、誰が見ても「仕事のため」と判断できます。
ライターがライティング講座やSEO勉強会に参加する費用も同様です。「文章を書いて売上を得ている人が文章力を磨く」という関連性が明快です。
個人事業主が経理・確定申告の知識を得るためのセミナーも、事業を運営する上で必要な知識習得として認められます。これは業種を問わず経費にできます。
そのほか、以下のようなケースも現業との関連が明確なら経費です。
- フリーランスエンジニアがプログラミング言語の研修を受ける
- コンサルタントが専門領域の最新動向を学ぶセミナーに参加する
- カメラマンがPhotoshop・Lightroomの講座を受講する
- オンラインコーチが自身のコーチングスキル向上のために研修を受ける
経費にならないケース(否認されたリアルな事例)
ここからが本題です。青色申告会の窓口で実際に見た、否認されたケースを3つ紹介します。
事例①:Webデザイナーが料理教室代を「インスピレーションのため」として計上
「デザインのセンスを磨くため」という理由でしたが、税務調査で否認されました。料理教室とWebデザインの業務の関連性が薄く、「個人の趣味・嗜好の範囲」と判断されたケースです。「クリエイターだから何でも経費になる」という発想は危険です。
事例②:エンジニアが「いつかAI事業をやりたい」と動画編集講座を受講
現在の事業はシステム開発。動画編集は将来の新事業のためという説明でしたが、「現在の事業に関連しない将来の事業のための費用は経費にならない」と指摘を受けました。新事業を始めてから計上するのが原則です。
事例③:フリーランスが英会話スクールを「海外クライアントへの対応のため」として計上
実際に海外クライアントがいればOKですが、この方には当時海外取引が一件もありませんでした。「将来のために英語を学んでいる」という状態では、現業との関連が薄いと判断されます。
共通するのは「将来のため」「なんとなく役に立ちそう」という理由です。現在進行形の事業に直結しているかどうかが判断基準になります。
資格取得費の扱い|現業に必要ならOK、別分野はNG
資格取得費は研修費より判断が難しいテーマです。国税庁の考え方(所得税基本通達37-24)を踏まえると、以下のように整理できます。
経費になる資格取得費
現在の業務遂行に必要な資格を取得するための費用は経費になります。
- フリーランスのWebデザイナーがIllustrator・Photoshopの認定資格を取る
- ITエンジニアがAWSやGoogle Cloudの資格を取る
- 経理代行をしている個人事業主が簿記の上位級を取る
- FP業務をしている方がFPの上位資格を取る
ポイントは「すでに業務として行っており、その業務のレベルを上げるための資格」という構図です。
経費にならない資格取得費
一方で、以下のケースは原則として経費になりません。
- 開業前に取得する資格の費用:事業を始める前の準備費用は、開業費として別の処理が必要です
- 現在の事業とは全く別分野の資格:カメラマンが宅建の勉強をするなど、業務との関連がない場合
- 転職・就職のための資格取得費:フリーランスをやめて会社員に戻るための資格費用は事業経費ではありません
よく「資格取得費は経費になる」という情報を見かけますが、これは条件付きです。「現在の事業に関連している」という前提を外すと、途端に通らなくなります。
勘定科目と仕訳例|「研修費」または「セミナー参加費」で処理する
研修費・セミナー代の勘定科目は、主に以下の2つが使われます。
- 研修費:比較的長期間の講座・研修プログラムに使うことが多い
- (または)セミナー参加費:1日〜数日程度の単発セミナーに使われることが多い
会計ソフトによっては「研修費」がそのまま選択肢にある場合とない場合があります。なければ「その他の経費」や「雑費」で代用することも可能ですが、金額が大きい場合は専用の科目を使うほうが整理しやすいです。
仕訳例①:2万円のオンライン講座をクレジットカードで支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 研修費 | 20,000円 | 未払金 | 20,000円 | 〇〇Webデザイン講座受講費 |
カード引き落とし時に「未払金 → 普通預金」で相殺します。
仕訳例②:5,000円のセミナー参加費を現金で支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 研修費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 | 〇〇マーケティングセミナー参加費 |
摘要欄には「どのセミナーか」が分かる情報を残しておくのがポイントです。後から見返したときに何の費用かわかるようにしておきます。
書籍・Udemy・YouTube Premiumはどう扱う?
書籍(専門書・業界本)
仕事に関連する書籍は全額経費になります。勘定科目は新聞図書費(または「図書費」)を使うのが一般的です。たとえばエンジニアがプログラミング関連書籍を買う、ライターが文体・文章力に関する本を買うケースです。
ただし、「ビジネス書全般を買ってみた」というレベルだと業務との関連が薄くなります。業務との関連性が説明できる書籍かどうかを意識してください。
Udemy・ストアカなどのオンライン講座
現在の業務に関連する講座であれば経費にできます。勘定科目は研修費が適切です。Udemyはセール時に1,500円程度から受講できるため、複数受講しているフリーランスの方も多いです。月額・年額のサブスクリプション型の学習プラットフォームも同様に、業務に使っている範囲で経費にできます。
YouTube Premium
これが一番難しいです。「業務に関連する動画を見るためにYouTube Premiumを契約している」という理由は、説明として弱いです。YouTube Premium はプライベートでも十分活用できるサービスであるため、家事按分の対象として業務利用割合だけを計上するか、もしくは経費にしない判断が現実的です。「YouTubeで仕事の勉強をしている」という理由だけでは、100%経費は通りにくいと考えてください。
セミナー参加時の交通費・宿泊費
セミナーへの参加が業務関連であれば、往復の交通費・宿泊費も経費になります。勘定科目は旅費交通費です。新幹線代・ホテル代・タクシー代など、領収書を保存しておけば問題ありません。
税務署に否認されないための記録方法
研修費・セミナー代は、適切に記録しておけば調査があっても説明できます。現場で「これがあれば安心」と伝えてきた記録方法を3つ紹介します。
記録①:受講証明・参加証明を保存する
セミナーの受講証・参加証・修了証は必ず保存します。紙でもらったものはスキャンしてPDF化、メールで届いたものはそのまま保存フォルダに入れておきます。「いつ・どこで・何を受けたか」が証明できる書類です。
記録②:領収書・決済明細を保存する
クレジットカード決済なら明細書、銀行振込なら振込履歴、現金払いなら領収書が必要です。法人・個人問わず、経費の領収書は原則7年間の保存義務があります(青色申告の場合)。
電子帳簿保存法の改正により、電子取引のデータは電子保存が必要になりました。オンライン決済の確認メール・PDFレシートは印刷せず、データのまま保存することが基本です。
記録③:「なぜこの研修が業務に必要か」をメモしておく
これが一番大事で、一番やっていない人が多いポイントです。
受講後に「この講座を受講した理由:〇〇のクライアント案件でPhotoshopのマスキング技術が必要になったため、〇〇講座を受講した」というメモを残しておくだけで、後から説明するときに圧倒的に楽になります。Notionでもメモアプリでも、自分が管理しやすいツールでかまいません。
税務調査は「おかしいと思ったから来る」というより、一定のルーティンで来ることもあります。数年後に「これは何のために受けたんでしたっけ」という状況を防ぐためにも、受講直後に記録を残す習慣をつけてください。
なお、フリーランスが経費にできるもの一覧では研修費以外の経費項目も整理しています。経費の全体像を把握したい方はあわせてご覧ください。
まとめ:研修費・セミナー代を正しく経費にする3つのポイント
研修費・セミナー代の経費処理は「現在の仕事に関連するかどうか」が全てです。迷ったときは次の3点を確認してください。
- 今の業務に直接関連しているか(「将来のため」「なんとなく役立ちそう」はNG)
- 受講証明・領収書が残っているか(証拠がなければ経費として認められない)
- なぜ受けたかをメモしているか(数年後に説明できる状態を維持する)
高額なオンライン講座・資格取得費は、きちんと記録しておけば節税効果の大きい経費です。逆に「なんとなく経費にしていた」という状態は、調査が入ったときにまとめて否認されるリスクがあります。
会計ソフトを使えば、研修費の仕訳も簡単に入力できます。摘要欄に「どのセミナーか」を書いておくだけで、後からの確認が格段に楽になります。
研修費の仕訳も簡単!おすすめ会計ソフト3選


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