青色申告65万円控除と10万円控除の違い|条件・選び方・節税効果【2026年版】

青色申告・帳簿

※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。なお本記事は2026年分(令和8年分)の税制を基準に解説しています。

「青色申告って65万円控除と10万円控除があるけど、何が違うの?」「自分はどっちになるの?」——この2つの差は、突き詰めると記帳のやり方と申告の手段だけです。そして今は会計ソフトがその差をほぼ埋めてくれます。この記事では、両者の違い・節税額・条件・つまずきやすい落とし穴まで、現場で実際に相談を受けたケースも交えて整理します。

結論:あなたはどちらを選ぶべきか

先に答えを言います。会計ソフトを使うなら、迷わず65万円控除を狙ってください。

65万円控除の「複式簿記」「貸借対照表の作成」という条件は、手書きやエクセルでやろうとすると確かに大変です。ですが会計ソフトに日々の取引を入力していけば、複式簿記の帳簿も貸借対照表も自動で出来上がります。あなたが意識する場面はほとんどありません。

10万円控除でいいのは、次のような限られたケースです。

  • 事業がごく小規模で、会計ソフトを使うほどでもないと感じる
  • e-Taxの環境(マイナンバーカード等)をどうしても用意できない
  • 貸借対照表を作る手間を、控除差より重く感じる

そうでなければ、同じ売上・同じ経費でも手元に残るお金が変わってきます。青色申告そのものを迷っている方は、まず青色申告と白色申告の違いから押さえておくと全体像が見えます。

65万円と10万円の違い【比較表】

2026年分の青色申告特別控除は、65万円・55万円・10万円の3段階です。違いを分けているのは、たった3つのポイントです。

項目 65万円控除 55万円控除 10万円控除
簿記の方式 複式簿記 複式簿記 簡易簿記でOK
貸借対照表の添付 必要 必要 不要
申告の手段 e-Tax または優良な電子帳簿の保存 書面でも可 書面でも可

つまり55万円と65万円の差は「e-Taxで出すか/優良な電子帳簿を保存するか」だけ。複式簿記も貸借対照表も同じです。すでに複式簿記で記帳して書面で出している人は、e-Taxに切り替えるだけで10万円分の控除が上乗せされる、ということになります。

節税効果の差を具体的に計算する

65万円控除と10万円控除の差は55万円。この「所得が55万円少なく扱われる」効果を、税率別に金額で見てみます。所得税は税率が高い人ほど効きますが、住民税は税率が一律10%なので、誰でも一律で約5.5万円軽くなります。

所得税率(課税所得の目安) 所得税の軽減 住民税の軽減 年間の節税額(合計)
5%(〜195万円) 約2.75万円 約5.5万円 約8.25万円
10%(〜330万円) 約5.5万円 約5.5万円 約11万円
20%(〜695万円) 約11万円 約5.5万円 約16.5万円

※あくまで概算です。正確な金額は税率・各種控除によって異なります。復興特別所得税は含めていません。

毎年これだけの差が出ます。10年続ければ税率10%の人で約110万円。やる作業はほぼ同じ(ソフトに入力してe-Taxで送るだけ)なのに、この差というのが青色申告のうまみです。

65万円控除の3つの条件【チェックリスト】

65万円控除を受けるには、次の3つをすべて満たす必要があります。1つでも欠けると55万円や10万円に下がります。

①複式簿記で記帳する

取引を「正規の簿記の原則」、つまり複式簿記で記帳します。借方・貸方……と聞くと身構えますが、ここはソフトの担当領域です。日付・金額・相手・用途を入力すれば、ソフトが自動で複式の仕訳に変換します。簿記の知識がなくても帳簿は完成します。

②貸借対照表・損益計算書を添付する

記帳したデータをもとに、青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)を作成し、確定申告書に添付して提出します。これもソフトが自動生成します。後述しますが、この貸借対照表の添付漏れが65万円を逃す典型パターンなので、提出データに含まれているかは必ず確認してください。

③e-Taxで申告する(または優良な電子帳簿を保存する)

2020年分から追加された条件です。次のどちらかを満たします。

  • e-Taxで申告書・決算書を期限内に提出する(多くの人はこちら)
  • 仕訳帳・総勘定元帳を「優良な電子帳簿」として保存し、事前に届出を出す

現実的には、ほとんどの個人事業主がe-Taxを選びます。マイナンバーカードとスマホがあれば自宅から送信できます。手順はe-Taxの始め方【2026年版】で詳しく解説しています。

65万円控除のよくある落とし穴

条件を満たしているつもりが、実は満たせていなかった——これは珍しくありません。相談現場でよく見る3つを挙げます。

①不動産所得は「5棟10室基準」が別途必要

5棟10室未満の不動産大家さんから相談を受けたことがあります。複式簿記でe-Tax申告もきちんと行っていたのに、65万円控除ではなく10万円しか適用されなかったというケースです。不動産所得に65万円控除を使うには、事業的規模(5棟以上または10室以上)を満たす必要があります。帳簿の質に関係なく、この規模基準を下回る場合は65万円は使えません。

事業所得(個人事業主・フリーランスの本業収入)にはこの規模要件はありません。不動産所得特有の関門だと覚えておいてください。

②貸借対照表を添付しないと10万円になる

e-Taxで申告したのに65万円控除が認められなかった、という相談を受けたことがあります。確認すると、貸借対照表を申告データに含めていませんでした。複式簿記で記帳していても、貸借対照表を添付しなければ条件②が未達となり、65万円ではなく10万円控除になります。

ソフトから申告データを書き出すとき、決算書一式(損益計算書+貸借対照表)がすべて含まれているか、送信前に画面で確認するクセをつけてください。

③期限後申告は65万円が取れない

65万円・55万円控除は、法定申告期限(原則3月15日)までに申告して初めて適用されます。1日でも遅れると、複式簿記も貸借対照表も完璧でも、控除は10万円に下がります。「あとで出せばいいや」が一番もったいないパターンです。e-Taxは24時間送信できるので、期限ギリギリでも自宅から間に合わせられます。

10万円でも青色申告には価値がある

仮に10万円控除にとどまったとしても、青色申告には控除額以外の武器があります。白色申告にはない特典です。

純損失の繰越控除(最大3年間)

事業が赤字(純損失)になった年、その赤字を翌年以降最大3年間繰り越して、黒字と相殺できます。たとえば開業初年度に50万円の赤字、翌年に200万円の黒字なら、翌年の所得を150万円として計算できます。開業して間もない時期や、設備投資で赤字が出た年に効いてくる制度です。白色申告ではこれが使えません。

青色事業専従者給与

生計を同じくする配偶者や家族が事業を手伝っている場合、その人に払う給与を全額経費にできます(事前に届出が必要)。白色申告では「事業専従者控除」として配偶者最大86万円などの上限がありますが、青色なら適正額であれば上限なく経費にできます。家族で事業を回している人には大きな差です。

会計ソフトを使えば複式簿記は難しくない

ここまで読んで「複式簿記」「貸借対照表」と聞いて身構えた方もいると思いますが、心配いりません。65万円控除のハードルは、会計ソフトがまるごと引き受けてくれます。あなたがやるのは、銀行口座やカードを連携して、出てきた取引に勘定科目を選ぶだけ。複式簿記の仕訳も決算書も自動です。

ソフト 向いている人 特徴
freee会計 簿記がまったく分からない初心者 質問に答える形式で申告書が完成。簿記用語をほぼ見ずに済む
マネーフォワード クラウド 口座・カードを多く使う人 連携できる金融機関の幅が広く、自動取込が強い
やよいの青色申告 オンライン 電話で相談しながら進めたい人 サポート体制が手厚く、初年度の料金プランも選びやすい

この記事で解説した65万円控除を実際に使うなら、会計ソフトを選ぶ必要があります。どれも無料お試し期間があるので、操作感を確かめてから決められます。タイプ別の選び方はこうです。

  • とにかく操作が簡単なものがいい→ freee会計。簿記を知らなくても画面の質問に答えるだけで進みます。
  • 銀行口座やカードの連携を重視したい→ マネーフォワード クラウド。明細の自動取込で入力の手間が最小になります。
  • 困ったとき電話サポートが欲しい→ やよいの青色申告 オンライン。人に聞きながら進めたい人に向いています。

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2027年分から75万円控除へ──改正のポイント

「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号)が2026年3月31日に公布され、青色申告特別控除の見直しが正式に決まりました。適用は令和9年分(2027年分)の所得税からです。

【法律成立済み】
以下は令和8年法律第12号(2026年3月31日公布)の内容です。適用は令和9年分(2027年分)の所得税・令和10年度分の個人住民税から。最新の詳細は国税庁ウェブサイトでご確認ください。

  • 75万円控除の新設:現行の65万円控除の要件に加え、「優良な電子帳簿」を継続運用すると控除額が75万円になります。
  • 書面申告の55万円控除が廃止:e-Tax申告が必須に。書面で提出すると複式簿記・貸借対照表を整えていても10万円控除に下がります。
  • 簡易簿記の10万円控除に制限:前々年分の事業所得・不動産所得に係る収入金額が1,000万円を超える場合、10万円控除の対象外になります(詳細は税務署または税理士にご確認ください)。

所得税は令和9年分(2027年分)から、住民税は令和10年度分(2028年度分)から適用されます。今のうちに会計ソフト+e-Taxの体制を整えておけば、令和9年分からそのまま75万円控除を狙える位置にいられます。逆に書面申告を続けると、令和9年分以降は55万円が10万円に下がります。

まとめ

65万円控除と10万円控除の差は、突き詰めれば「複式簿記」「貸借対照表の添付」「e-Tax申告」の3点。そしてこの3点は、会計ソフトを使えばほぼ自動でクリアできます。

  • 65万円と55万円の違いは「e-Taxで出すか」だけ。書面派はe-Tax化で10万円分の上乗せが狙える
  • 控除55万円分の差は、税率10%の人で年間約11万円の節税
  • 不動産所得は5棟10室基準、貸借対照表の添付漏れ、期限後申告に注意
  • 令和9年分(2027年分)から最大75万円控除へ法律成立済み。e-Tax移行は早いほど有利

「複式簿記は難しそう」という理由だけで10万円控除を選んでいるなら、それは毎年数万円〜十数万円を取りこぼしているのと同じです。ソフトに任せれば、手間はほとんど変わりません。なお個別の判断に迷う場合は、詳しくは税務署または税理士にご確認ください。

よくある質問

Q1. e-Taxで申告すれば必ず65万円控除になりますか?

e-Tax申告は65万円控除の条件のひとつですが、それだけでは不十分です。「複式簿記による帳簿作成」と「貸借対照表・損益計算書の添付」も同時に満たす必要があります。この3つがそろって初めて65万円控除が適用されます。

Q2. 「複式簿記」は簿記の知識がなくてもできますか?

freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを使えば、日々の入出金を登録するだけで複式簿記の帳簿が自動で作られます。確定申告の相談窓口でも「ソフトを使えば誰でもできます」とお伝えしてきました。手書きで複式簿記を行う必要はありません。

Q3. 期限後申告になってしまった場合、翌年から65万円控除に戻れますか?

期限後申告をした年は65万円控除が10万円に下がりますが、翌年は改めて条件を満たせば65万円控除に戻れます。一度失うと永久に取り戻せないわけではありません。

Q4. 副業収入(アフィリエイトや原稿料)も65万円控除の対象になりますか?

65万円控除は「事業所得」がある青色申告者に適用されます。アフィリエイトや単発の原稿料など「雑所得」に分類される収入は対象外です。

Q5. 2027年に控除額が75万円に拡大されると聞きましたが、条件も変わりますか?

令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日閣議決定)により、2027年分から青色申告特別控除が75万円に拡大されることが正式に決まりました。現行の65万円控除の条件(複式簿記・e-Tax申告・決算書添付)に加え、仕訳帳・総勘定元帳を「優良な電子帳簿」として保存することが追加要件です。対応した会計ソフトを使えば自動的に満たせる場合が多いですが、お使いのソフトが要件を満たすか事前に確認しておきましょう。

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