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「青色申告なら65万円控除が受けられると聞いた。でも複式簿記って何だろう……難しそうだから10万円のほうでいいか」
相談会場でこういう方を、何百人と見てきました。惜しいな、と思いながら。65万円と10万円の差は、そのまま所得税・住民税・国民健康保険料の計算ベースが55万円変わるということです。税率が20%なら年間11万円の差になります。
「複式簿記が難しいから諦めた」のは、実はもったいない選択でした。今は会計ソフトが帳簿の入力形式を自動処理してくれるので、利用者側が複式簿記を「理解する」必要はほとんどないからです。
この記事では、65万円控除と10万円控除の違いを整理して、どうすれば65万円を取りにいけるか、現場で見てきた視点からお伝えします。
青色申告特別控除とは何か
青色申告特別控除は、青色申告の承認を受けた個人事業主・フリーランスが、一定の要件を満たすと売上から差し引ける特典です(根拠法令:所得税法第57条の2)。
白色申告にはこの控除がありません。青色申告を選ぶだけで最低でも10万円、条件を満たせば65万円が所得から引けます。
65万円控除と10万円控除の違い(一覧表)
| 項目 | 65万円控除 | 10万円控除 |
|---|---|---|
| 控除額 | 65万円 | 10万円 |
| 簿記の方式 | 複式簿記(正規の簿記の原則) | 単式簿記(簡易簿記)でOK |
| 貸借対照表の添付 | 必要(損益計算書も) | 不要 |
| e-Tax申告または 優良電子帳簿の保存 |
いずれか必要 | 不要 |
| 青色申告承認申請 | 必要 | 必要 |
| 申告書の提出期限 | 期限内(3月15日まで) | 期限内 |
大きな違いは3点:①簿記の方式、②貸借対照表の有無、③申告の手段(e-Taxかどうか)です。逆に言えば、この3点をクリアするだけで55万円多く控除できます。
65万円控除の3つの条件
条件①:複式簿記で記帳する
複式簿記とは、1つの取引を「借方・貸方」の2面から記録する方法です。たとえば「売上10万円が銀行口座に振り込まれた」なら、現金が増えた側と売上が立った側の両方を記録します。
単式簿記(家計簿のような収支の記録)と比べると確かに手間はかかります。しかし会計ソフトを使えば、「売上10万円を入力した」時点でソフトが自動的に複式簿記の形式に変換してくれます。利用者側が「借方・貸方」を意識する場面はほとんどありません。
青色申告会の窓口で毎年来ていた方の中に、「複式簿記と聞いて2年間諦めていたけど、ソフトを使ったら翌月には慣れた」という方が何人もいました。
条件②:貸借対照表・損益計算書を申告書に添付する
複式簿記で記帳していれば、会計ソフトが自動的に貸借対照表と損益計算書を作成します。これを確定申告書に添付(e-Taxなら送信データに含める)することが必要です。
会計ソフトを使っている場合、添付のし忘れに注意が必要です。手動で紙出力して郵送するパターンではなく、e-Taxで送信すれば一括で処理されるため、ミスが起きにくくなります。
条件③:e-Taxで申告する OR 優良な電子帳簿を保存する
2020年(令和2年)以前は複式簿記で記帳して書類を添付すれば65万円控除でしたが、改正によりこの条件が加わりました。現在は以下のどちらかが必要です。
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)で申告書を提出する
- 優良な電子帳簿(電子帳簿保存法に基づく)を保存して届出書を提出する
実務上は、e-Taxで申告するほうが圧倒的に多いです。マイナンバーカードとスマートフォンがあればe-Tax申告はできます。freee・マネーフォワード・やよいの会計ソフトはいずれもe-Tax送信に対応しているため、ソフトの画面上で操作が完結します。
10万円控除でも青色申告を選ぶ価値はある
「65万円は難しいから白色申告でいい」という発想は一度捨てたほうがいいです。10万円控除でも青色申告には他の特典があります。
純損失の繰越控除(最大3年間)
事業が赤字になった年、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越せます。たとえば今年100万円の赤字が出て翌年150万円の黒字になった場合、黒字から前年の損失を差し引いて所得50万円として計算できます。白色申告にはこの制度がありません。
フリーランス1年目や事業立ち上げ期は赤字になりやすい。そういう時期に青色申告を選んでいるかどうかで、数年後の税負担に差が出ます。
青色事業専従者給与の経費算入
家族(配偶者や親族)を従業員として雇っている場合、支払う給与を経費にできます。白色申告の場合は「事業専従者控除」として金額に上限がある形でしか認められません。青色申告であれば、届出書に記載した金額の範囲内で実際に支払った給与全額を経費にできます。
会計ソフトを使えば複式簿記は自動処理される
青色申告の相談を受けてきた中で、「複式簿記が怖い」という方に共通していたのは、会計ソフトを使っていないか、使い方を知らないかのどちらかでした。
主要な会計ソフト(freee・マネーフォワード・やよいの青色申告)はすべて、売上・経費の入力を行うだけで、複式簿記の帳簿形式・貸借対照表・損益計算書を自動生成します。利用者が「借方に何を書くか」を考える場面はほぼありません。
| ソフト | 複式簿記の自動処理 | e-Tax連携 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| freee会計 | ◎ | ◎ | 非会計のフリーランスに人気。銀行・カード連携で自動仕訳 |
| マネーフォワード クラウド確定申告 |
◎ | ◎ | 対応銀行・カードが多い。複数事業者は使い勝手がいい |
| やよいの青色申告 | ◎ | ◎ | 老舗で信頼性が高い。電話サポートが充実 |
どのソフトでも、65万円控除の条件である「複式簿記による記帳」「貸借対照表・損益計算書の作成」「e-Tax申告」はすべて対応済みです。
2027年分から75万円控除へ——2026年税制改正の内容
⚠️ 【未確定情報】
以下の内容は2026年度税制改正大綱(令和7年12月19日与党公表)に基づく情報です。国会審議・法案成立の状況によって変更される可能性があります。最新情報は必ず国税庁ウェブサイトでご確認ください。
2026年度税制改正大綱によると、2027年(令和9年)分の所得税から、青色申告特別控除が見直される方向です。
改正の主なポイント
- 75万円控除の新設:現行の65万円控除に加え、優良な電子帳簿の保存または請求書等の電子取引データの会計ソフト連携保存を行った場合、最大75万円控除が可能になる見込み
- 簡易簿記(10万円控除)の縮小:前々年分の事業所得・不動産所得に係る収入金額が1,000万円を超える場合、e-Tax申告をしていても控除額が0円になる
- 書面申告での55万円控除が廃止:紙で申告書を提出しているケースは、65万円ではなく10万円控除に引き下げられる方向
現時点でe-Taxで申告し、会計ソフトで複式簿記を管理している方は、75万円控除の方向に素直に移行しやすい状況です。一方で今後も紙申告や簡易簿記を続けるつもりの方は、改正後に不利になる可能性があります。
今のうちから会計ソフト+e-Tax申告の体制を整えておくことが、2027年以降も有利に動けるポイントです。
まとめ:65万円控除は難しくない。ソフトがやってくれる
青色申告65万円控除の条件を整理すると、次の3点です。
- 複式簿記で記帳する(会計ソフトが自動処理)
- 貸借対照表・損益計算書を申告書に添付する(会計ソフトが自動作成)
- e-Taxで申告する(会計ソフトから直接送信できる)
10万円控除でも純損失の繰越・専従者給与など青色申告の特典は受けられますが、65万円と10万円の差額55万円は、税率によっては年間10万円以上の節税差になります。「複式簿記が難しそう」という理由だけで諦めてきた方に、一度ソフトを触ってみることを強くおすすめします。
また2027年分からは最大75万円控除に引き上げられる改正が予定されています。今から会計ソフト+e-Tax申告の体制を作っておくと、改正後もスムーズに対応できます。
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