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6月になると、税務署から「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」という封書が届くことがあります。開けてみると見慣れない金額が書かれていて、「これは何?払わないといけないの?」と戸惑う方は少なくありません。

結論から言うと、予定納税は罰金でも督促でもありません。来年の確定申告で精算する「前払い」の制度です。そして、今年の売上が落ちているなら「減額申請」という正式な手続きで納付額を減らすことができます。

この記事では、元青色申告会の職員として17年間・年間500人以上の確定申告をサポートしてきた経験をもとに、予定納税の仕組みから減額申請の具体的な手順まで、現場で本当に役立つ情報をまとめました。

予定納税とは?6月に届く通知書の正体

予定納税とは、前年の所得が一定以上あった人が、その年の所得税・復興特別所得税の一部を「前払い」する制度です。7月と11月の2回に分けて納付します。

税務署が「前年の申告内容」をもとに金額を計算し、6月中旬に通知書を送ってきます。つまり届いた時点で、すでに「あなたの納付額」は決まっています。

罰金でも督促でもない

通知書を初めて見た方から「なにか問題が起きたのか」と聞かれることがよくあります。そうではありません。前年の所得が多かった人に対して、国が「今年分も同じくらい税金がかかるだろう」と見込んで、前払いをお願いしている制度です。

支払った予定納税は、翌年の確定申告で精算されます。実際の所得税額より多く払っていれば、その差額は還付されます。二重取りにはなりません。

前払い分は確定申告で相殺される

たとえば、確定申告で計算した実際の所得税が50万円で、予定納税をすでに合計24万円払っていた場合、残りの26万円だけ納付すれば完結します。確定申告書の第一表には「予定納税額」の記入欄があり、そこに書いた金額が自動的に差し引かれます(この欄の書き忘れには要注意。後述します)。

対象になる人|予定納税基準額のしくみ

予定納税の対象になるのは、「予定納税基準額が15万円以上」の人です。

予定納税基準額とは

予定納税基準額は、原則として前年分の申告納税額がそのまま使われます。所得税と復興特別所得税の合計額です。

  • 前年の確定申告で納付した税額(源泉徴収分を除いた「申告で追加で払った額」ではなく、所得から計算した税額全体)が基準になります
  • その金額が15万円以上なら予定納税の対象です
  • 5月15日時点で確定している前年分の数字が使われます

出典:国税庁 タックスアンサー No.2040 予定納税

通知書の見方

届いた「予定納税額の通知書」には、第1期分・第2期分それぞれの金額が記載されています。2つの金額を足すと、予定納税基準額のおよそ2/3になっているはずです(基準額の1/3ずつ、2回分)。

給与所得者でも対象になるケース

フリーランスだけでなく、副業で多額の所得があったサラリーマンや、不動産所得・配当所得などが多い給与所得者も対象になることがあります。会社員であっても通知書が届いた場合は同じ手続きが必要です。

いつ・いくら払う?納付期限と納付方法

2026年(令和8年)の納付スケジュール

納付期間 納付額
第1期 2026年7月1日〜7月31日(金) 予定納税基準額の1/3
第2期 2026年11月1日〜11月30日(月) 予定納税基準額の1/3

出典:国税庁 主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日

主な納付方法

振替納税
あらかじめ口座を登録しておくと、期限日に自動引き落としされます。登録は確定申告時にまとめて行えます。詳しい手続きは振替納税の申請方法をご覧ください。

e-Tax(ダイレクト納付・インターネットバンキング)
e-Taxにログインして「納付」から手続きできます。ダイレクト納付なら操作当日または翌営業日に引き落とされます。

クレジットカード納付
「国税クレジットカードお支払サイト」から納付できます。納付額に応じた決済手数料がかかる点に注意が必要です。

コンビニ納付・金融機関窓口
納付書(QRコード対応)を使ってコンビニや銀行窓口でも納付できます。

期限を過ぎると延滞税がかかる

予定納税を無視したり、うっかり忘れたりした場合は「延滞税」が発生します。法定納期限の翌日から完納日までの日数に応じて計算されるため、放置するほど金額が増えます。「どうせ確定申告で精算するから」という判断は誤りです。必ず期限内に納付してください。

売上が落ちたら「減額申請」|7月15日が期限

予定納税の制度で、多くの個人事業主が気づいていないのが「減額申請」です。今年の売上や所得が前年より大幅に落ちそうな場合、通知書に書かれた金額を正式な手続きで減らすことができます。

どんな人が申請できる?

以下のような事情があり、今年の所得見積もりが前年より少なくなる見込みの方が対象です。

  • 廃業・休業した
  • 業況が不振で、今年の所得が明らかに前年を下回る見通しがある
  • 医療費控除・扶養控除など、今年から新たに大きな控除が増える
  • 災害・盗難などの損失が生じた

重要なのは「6月30日現在の状況をもとに、今年の申告納税見積額を計算した結果、予定納税基準額を下回る」と見込まれることです。あくまで見積もりなので、確定した数字でなくても構いません。

出典:国税庁 A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続

2026年の申請期限

申請対象 提出期限 判定基準日
第1期・第2期 両方の減額 2026年7月15日(水)まで 6月30日現在の所得見積もり
第2期分のみの減額 2026年11月16日(月)まで※11月15日が日曜のため翌日 10月31日現在の所得見積もり

申請書の入手先と提出方法

書面で提出する場合
国税庁のウェブサイトから「予定納税額の減額申請書」をダウンロードするか、最寄りの税務署窓口でもらえます。記入した申請書を税務署に持参または郵送します。

令和8年分 予定納税額の減額申請書(国税庁PDF)

e-Taxで提出する場合
令和5年6月以降、電子証明書を使ってe-Taxから減額申請書を提出できるようになりました。税務署から送られる承認等通知書もe-Taxで受け取ることができます。マイナンバーカードをお持ちの方はe-Taxが便利です。

申請書の書き方の流れ

  1. 今年の所得を見積もる:1月から6月30日までの売上と経費から、今年1年の損益を概算する。会計ソフトを使っていれば試算表で確認できます
  2. 申告納税見積額を計算する:見積もった所得に所得控除を当てはめ、所得税額を算出する。所得税の計算方法も参考にしてください
  3. 申請書に記入する:申告納税見積額、減額申請後の予定納税額(第1期・第2期)を記入する
  4. 税務署に提出する:期限(7月15日)までに書面またはe-Taxで提出する
  5. 承認通知を受け取る:税務署が審査し、承認・一部承認・却下のいずれかが通知される。承認されれば、その金額だけ納付すれば完了

現場エピソード:「前年だけ突出して売上が高かった」パターン

私が青色申告会の窓口で最も多く見てきたのが、このパターンです。

あるWebデザイナーの方が、前年に大型案件が重なって所得が通常の2〜3倍になりました。翌年の6月、通知書を見て「こんなに払えない」と相談に来られたのです。今年は案件が減っていて、前年の半分以下の所得しか見込めない状況でした。

計算してみると、所得見積もりベースでの申告納税見積額は予定納税基準額を大きく下回っていました。すぐに減額申請書を作成して提出したところ、第1期・第2期ともに大幅に減額が認められ、キャッシュフローの危機を回避できました。

「前年だけ所得が多かった」場合こそ、減額申請が最も効果を発揮します。通知書の金額をそのまま払う義務はないのです。

よくある質問

減額申請しないで放置したらどうなりますか?

減額申請をしないまま期限を過ぎた場合、通知書に記載された金額をそのまま納付しなければなりません。期限内に納付しなければ延滞税が発生します。

「確定申告で精算されるから後でいい」という考えは危険です。予定納税の期限と確定申告の期限は別です。第1期(7月31日)・第2期(11月30日)それぞれの期限を守る必要があります。

確定申告で予定納税の欄を書き忘れるとどうなりますか?

確定申告書の第一表には「予定納税額」の記入欄(第1期分・第2期分)があります。ここに記入しないと、すでに払った予定納税が「なかったこと」になり、税金を二重に払う計算になってしまいます。

通知書に書かれた金額を必ず手元に保管しておき、確定申告時に正確に転記してください。e-Taxの確定申告ソフトや会計ソフトには自動入力機能があるものもあります。

予定納税の通知が来なかったら対象外ですか?

基本的にはそうです。予定納税基準額が15万円未満の場合は通知書が届かず、予定納税の義務もありません。ただし、開業初年度や前年が赤字だった場合など、申告納税額がなかった場合も通知は来ません。通知書が届いた年と届かない年があるのはそのためです。

廃業した場合は必ず減額できますか?

廃業は減額申請の対象事由として明記されています(国税庁 A1-3)。廃業後に予定納税通知書が届いた場合は、速やかに減額申請を行ってください。廃業届の写しなど、状況を説明できる書類があると手続きがスムーズです。

まとめ

予定納税は、前年の所得が多かった個人事業主が対象になる「所得税の前払い制度」です。罰金でも督促でもなく、確定申告で精算されます。

  • 予定納税基準額が15万円以上の人が対象
  • 2026年の納付期限は第1期:7月31日、第2期:11月30日
  • 今年の所得が前年より落ちる見込みなら減額申請が使える
  • 第1期・第2期両方の減額申請は7月15日まで(絶対に期限を守る)
  • e-Taxでも申請・通知受領が可能
  • 確定申告では予定納税額の記入欄を必ず埋める

減額申請の肝は「今年の所得見積もり」を正確に出すことです。会計ソフトの試算機能を使えば、1〜6月の損益を自動集計できるので、見積もりの手間が大幅に省けます。

📊 所得見積もりは会計ソフトの試算機能が便利です

予定納税の減額申請には「今年の所得見積もり」が必要です。会計ソフトなら年間の損益を自動集計できるので、見積もりが格段に楽になります。

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