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「店内で食べてもらうぶんが1%になるんですよね?」
食品の消費税1%減税について、相談窓口でいちばん多いのは「結局、どれが1%の対象になるのか」という質問です。そして、いちばん多い間違いが冒頭の思い込みです。実際は逆で、店内飲食は10%のまま、テイクアウトが1%になります。
⚠️ 【未確定情報】
税率1%への引下げは、2026年9月15日に大綱が閣議決定され、関連法律案が2026年10月9日に閣議決定されて臨時国会に提出されましたが、本記事執筆時点(2026年10月)では成立していません。国税庁の資料も「法案が成立した場合」の内容として公表されているもので、審議の過程で変更される可能性があります。最新情報は必ず国税庁・消費税率引下げ特設サイトでご確認ください。
なお、この記事の中心であるイートイン・テイクアウトの判定基準そのものは、現行の軽減税率制度のルール(国税庁Q&A 個別事例編・令和8年4月改訂)で、未確定の話ではありません。
消費税1%減税の対象判定は「何を」「どう売るか」の2点で決まる
相談を受けたとき、私がまず確認するのは次の2点だけです。
- 何を販売しているか(飲食料品かどうか)
- どういう形式で販売しているか(店内飲食か、持ち帰りか)
①については、調べ直す必要がほとんどありません。国税庁Q&A問1-2は、税率1%の対象となる飲食料品の範囲は、令和9年3月31日以前に税率8%の対象である飲食料品の範囲と同様としています(飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A)。つまり、いま8%で売っているものが1%になり、いま10%のものは10%のままです。酒類・医薬品・医薬部外品は対象外で、これも変わりません。
実務で迷うのは②です。同じ弁当でも、売り方によって税率が変わります。引下げ期間や税率の内訳など制度の全体像は、こちらで解説しています。
→ 食品の消費税1%減税|2027年4月・課税事業者の準備
最大の誤解|店内飲食が10%・テイクアウトが1%
なぜ逆に覚えてしまうのか。「店内で飲食するほうが手厚く扱われそう」という感覚があるからだと思います。
軽減税率の対象にならない「食事の提供」とは、飲食設備のある場所で飲食料品を飲食させる役務の提供をいいます。一方、持ち帰りのための容器に入れ、または包装を施して行う譲渡(いわゆるテイクアウト)はここに含まれません(消法2①九の二、別表1一イ)。外食はもともと軽減税率の対象外なので8%になったことがなく、今回の引下げでも10%のまま据え置きです。
そして、どちらに当たるかはその飲食料品の提供を行った時点で、相手方に意思確認するなどの方法で判定します(問58、基通5-9-10)。あとから顧客がどうしたかで決まるわけではありません。
国税庁Q&Aの個別事例で見る判定早見表
| 売り方 | 税率 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 店内のテーブル・椅子で飲食させる | 10% | 「食事の提供」。セルフサービス店・立食カウンターのみの店も同じ(問50・問64) |
| テイクアウト(持ち帰り容器・包装) | 1% | 「飲食料品の譲渡」。提供時の意思確認で判定する(問58) |
| そばの出前・宅配ピザ | 1% | 指定場所まで単に届けるだけ。ケータリングにも当たらない(問77) |
| 配達先で給仕・盛り付けまで行う | 10% | ケータリング・出張料理に該当(問78) |
| 味噌汁付弁当を配達し、味噌汁を器に注ぐ | 1% | 「取り分け」は販売に必要な行為でケータリングではない(問79) |
| 屋台・フードイベント(テーブル等あり) | 10% | 自ら設置した場合も、設備設置者から使用許可を受けた場合も該当(問51) |
| 屋台(テーブル等なし/公共ベンチのみ) | 1% | 使用許可をとっておらず誰でも自由に使えるベンチは飲食設備に当たらない(問51) |
| 飲食店のレジ前に置いた菓子の販売 | 1% | 単に飲食料品を販売しているだけ(問62) |
| 店内で缶・ペットボトルをそのまま出す | 10% | コップに移さなくても店内で飲食させるものとして提供している(問63) |
| セット商品のドリンクだけ店内で飲む | 10% | 一の商品なのでセット全体が「食事の提供」(問60) |
| 食べ残しを折り詰めにして持ち帰らせる | 10% | 提供時点では店内飲食のための提供(問59)。回転寿司のパック詰めも同じ(問61)。ただし最初から持ち帰り用として注文を受けてパック詰めするものは1%(問61なお書き) |
| 社員食堂での食事の提供 | 10% | 社員・職員に飲食させる役務の提供に当たる(問49) |
| 酒類(店内・持ち帰り問わず) | 10% | そもそも飲食料品の範囲から除かれている(消法別表1一) |
問番号は国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」Ⅲ 外食の範囲のものです。1%の対象範囲は8%の範囲と同じなので、この事例集はそのまま使えます。
弁当屋・パン屋は「意思確認が不要になる条件」を押さえる
テイクアウト中心の店で負担になるのが、1件ごとの意思確認です。ここには実務的な抜け道が用意されています。
| 店の状況 | 必要な対応 |
|---|---|
| 顧客が使う飲食設備が一つもない | 意思確認は不要。軽減税率対象の飲食料品は1%。従業員専用バックヤード・トイレ・サッカー台は飲食設備に当たらない(問53・問54) |
| イートインコーナーや休憩スペースがある | 「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」等の掲示による意思確認で差し支えない。大半の商品が持ち帰りであることを前提に営業している実態があれば、全員に質問する必要はない(問52・問53) |
| 飲食できる場所を限定している | 「飲食の際は休憩スペースをご利用ください」と掲示すれば、通路のベンチ等は飲食設備に当たらない(問55) |
| 飲食できる品目を限定している | 「お飲み物とパンのみお召し上がりいただけます」と掲示すれば、弁当・惣菜は意思確認不要で1%(問56) |
パン屋がイートインを飲み物とパンだけに限っているなら、弁当や惣菜については聞かなくてよいわけです。
ただし条件があります。掲示していても、実態としてその場所・その品目を顧客に飲食させている場合は「食事の提供」に当たり10%です(問53注・問56注)。「飲食はお控えください」と貼っておきながら実際には食べさせているケースは認められません。掲示は運用とセットです。
消費税1%減税の対象判定を今すぐ始めるべき業種
優先度は業種ではっきり分かれます。
| 区分 | 該当する事業者 |
|---|---|
| 今すぐ判定を | 飲食店、食品小売業、弁当屋、パン屋、惣菜店、農産物直売所、ネットでの食品販売──飲食料品を販売している事業者 |
| 急がなくてよい | 飲食料品を販売していない業種(ライター・デザイナー・エンジニア・士業・建設業など) |
急がなくてよい側も無関係ではありません。打合せの弁当代や差入れの飲み物は仕入側で1%になるため、帳簿の税率区分は1%・8%・10%の3種類に増えます。それでも売上側の判定が必要なのは、飲食料品を売っている事業者だけです。
もう一つの誤解|税率は仕入れた時期ではなく売った時期で決まる
判定と並んで多いのが、この質問です。
「3月に8%で仕入れた在庫を4月に売ったら、在庫の消費税を1%に直すんですか?」
直す必要はありません。棚卸資産の税率を仕入時点にさかのぼって付け替える処理は不要です。国税庁Q&A問1-3の注2は、はっきりこう書いています。
令和9年3月31日までに行われた飲食料品の仕入れについては、その販売(売上げ)が同年4月1日以後に行われたとしても、税率8%が適用されます。
仕入れと売上げは、それぞれの取引が行われた時点の税率で処理します。整理すると次のとおりです。
| 取引 | 時期 | 適用税率 |
|---|---|---|
| 飲食料品の仕入れ | 令和9年3月31日まで | 8%のまま(仕入税額控除も8%で計算) |
| 飲食料品の売上げ | 令和9年4月1日〜令和11年3月31日 | 原則1%(施行前の契約に基づく販売も対象。ただし、一定の定期供給契約・通信販売など、問1-6の経過的取扱いが適用される場合は8%) |
3月31日までに結んだ契約にもとづく販売でも、引渡しが4月1日以後なら1%です(定期供給契約・通信販売の経過的な取扱いに当たる場合を除く)。逆に、3月31日以前に販売した飲食料品が4月1日以後に返品された場合は、税率8%で対価の返還等の計算をします(問1-5)。
仕入側でもう一つ注意したいのが、売り手と買い手で計上基準が違うケースです。出荷基準の仕入先が3月30日出荷で8%の請求書を出し、自社の検収日が4月2日だった場合、買い手は売り手が適用した税率(8%)で仕入税額控除を行います(問1-4)。自社の計上日で勝手に1%に直すと誤りになります。インボイスに税率が明記されていないときは、取引先に確認してください。
深夜営業の店は、継続適用している売上計上基準に従い、4月1日の午前0時から1時までの売上げを3月31日分として計上しているなら、その時間帯の軽減税率対象飲食料品の譲渡は8%として差し支えないとされています(問1-3)。
そして、ここが還付の話につながります。仕入れは8%や10%、売上げは1%という状態になると、控除する仕入税額が売上税額を上回りやすくなります。還付の条件や免税事業者の届出特例は、こちらで詳しく解説しています。
→ 食品の消費税1%減税|2027年4月・課税事業者の準備
対象判定を誤ると、本則課税か簡易課税かの選択まで狂う
判定ミスの本当の怖さは、申告書の税率欄を間違えることだけではありません。どの申告方式を選ぶかという、もっと手前の判断が狂います。
本則課税(一般課税)と簡易課税のどちらが有利かは、売上税額と実際の仕入税額を比べて決めます。この比較の入口が、売上げの1%・8%・10%への振り分けです。
- テイクアウト・宅配が売上の大半の店:売上税額は1%で小さく、仕入れは10%や8%。本則課税なら還付が出る可能性があります
- イートイン中心の飲食店:売上の多くが10%のまま。税率差を理由とした還付は見込みにくく、簡易課税のほうが有利なまま続くこともあります
この振り分けを「店内飲食が1%」と逆に覚えていたら、試算の結論もそのままひっくり返ります。簡易課税のままでは、実際の仕入れがどれだけ多くても還付は出ません(ただし簡易課税のままでも、1%対象の飲食料品の譲渡については売上税額と同額の仕入税額を計上できる計算特例が設けられる予定です。詳細はこちら)。
相談窓口で繰り返し見てきたのが、簡易課税の届出を出さないまま本則課税で申告し、納税額が大きくなっていたケースです。有利不利を試算する習慣がないまま課税事業者になった方に多いパターンでした。今回は逆方向で、簡易課税を選んでいる店が還付の機会に気づかないという形で同じことが起きます。入口の判定を間違えたままでは、どちらが得かの計算に意味がなくなります。
どちらが有利かの考え方は、こちらで数字を使って解説しています。
→ 消費税は本則課税と簡易課税どちらが得?判断基準を解説
判定した結果は、頭の中に置かず書き出してください。メニューや商品ごとに「1%・8%・10%」を一覧にして、レジの設定と突き合わせる。イートインの掲示文も実際の運用と合っているか見る。
そのうえで、区分した売上げを税率ごとに集計する作業は、手書きの台帳では追いつきません。1%・8%・10%の3区分を1件ずつ分けて集計するなら、クラウド会計ソフトに任せるのが現実的です。
▼ 消費税の区分集計・申告機能を比較したいクラウド会計ソフト
税率ごとの売上・仕入集計と消費税申告書の作成までつながります。2027年4月の1%切替え・2029年4月の8%戻しへの対応時期や必要な設定、対応プラン、レジ連携の範囲は各社の公式案内で確認してください(還付申告に対応していないプランもあります)。
- ▶ 30日間無料で試す(freee会計) ── レジアプリ連携あり。イートインと持ち帰りの売上を分けて記録したい小規模店向け
- ▶ 1か月無料で始める(マネーフォワード クラウド確定申告) ── 複数口座・複数仕入先の連携が得意。食材の仕入先が多い飲食店・食品小売向け
- ▶ 初年度無料で使ってみる(やよいの青色申告 オンライン) ── 画面が素直で電話サポートもある。手書き帳簿やエクセルから移行する人向け
どれも無料期間があります。税率区分の入力画面を実際に触ってから、1本に決めてください。
まとめ:消費税1%減税の対象判定チェックリスト
- 店内飲食は10%・テイクアウトは1%:逆ではありません。飲食設備のある場所で飲食させる「食事の提供」が10%、持ち帰り容器に入れた譲渡が1%です
- 判定は提供した時点で行う:意思確認などの方法で、その場で決めます。食べ残しの持ち帰りや回転寿司のパック詰めは、提供時点が店内飲食なら10%です
- 飲食設備がなければ意思確認は不要:飲食場所を限定する場合も、店内利用の意思確認自体は必要です。飲食できる品目を限定し、実態も掲示どおりなら、それ以外の飲食料品は意思確認なしで1%にできます
- 税率は仕入れた時期ではなく売った時期で決まる:3月31日までの仕入れは8%のまま、4月1日以後の売上げは1%。在庫の税率を付け替える処理は不要です
- 判定を終えてから申告方式を見直す:1%・8%・10%の振り分けが、本則課税と簡易課税のどちらが得かという計算の前提になります
対象品目の細かい事例は、国税庁の消費税の軽減税率制度に関するQ&Aに100問以上そろっています。自分の店の売り方に近い問を一度読んでおくと、2027年4月に慌てずに済みます。判断に迷う場合は、消費税軽減税率・インボイスコールセンター(0120-205-553/9:00〜17:00・土日祝除く)でも確認できます。


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