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「赤字だから確定申告しなくていい」——その判断、3年分の損をしているかもしれません
独立して最初の年、思ったより仕事が取れなくて赤字になってしまった。あるいは設備投資が重なって大きくマイナスが出た。
そういうとき、「どうせ税金ゼロだから申告しなくていいか」と思う人が多いです。
でも、それは大きな損失になります。
青色申告者は赤字を最大3年間繰り越して、翌年以降の税金から差し引けます。申告しなければ、この権利は消滅します。青色申告会に勤めていた17年間で、「去年申告し忘れて損した」という相談を何度聞いたかわかりません。
この記事では、赤字でも確定申告が必要な理由と、純損失の繰越控除の具体的な使い方を解説します。
赤字でも確定申告が必要な理由
青色申告の「純損失の繰越控除」とは
青色申告者が事業で赤字(純損失)を出した年に確定申告をすると、その損失を翌年以降3年間にわたって所得から差し引けます(出典:国税庁 No.2070「純損失の損失繰越控除」)。
白色申告者にはこの制度が使えません。純損失の繰越は青色申告専用の特典です。
具体例で見てみましょう。
| 年 | 事業所得 | 繰越損失の控除 | 課税所得 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | ▲100万円(赤字) | — | 0円 |
| 2年目 | 200万円 | ▲100万円 | 100万円 |
| 3年目 | 300万円 | 0円(使い切り) | 300万円 |
1年目に100万円の赤字が出て申告していた場合、2年目の所得200万円から100万円を差し引いて、課税所得を100万円圧縮できます。実際の節税額は課税所得と適用税率によって変わりますが、この「100万円の控除枠」が消えるのは大きな損失です。
申告しなければ、この100万円の権利はなかったことになります。
繰戻し還付という選択肢もある
青色申告者には「繰越」のほかに「繰戻し」という方法もあります。前年に所得があった場合、今年の損失を前年の所得にさかのぼって通算し、前年に払った税金の還付を受けられる制度です。
赤字が出た年に「今すぐ現金が戻ってくる」のがメリットですが、適用できる条件があります。
- 前年も青色申告をしていること
- 前年の所得税を実際に納付していること
- 赤字の年の申告期限内に申請すること
繰越か繰戻しか、どちらが有利かは翌年以降の収入見通しによって変わります。迷ったら会計ソフトのシミュレーション機能か、税理士への相談をおすすめします。
申告しないと起きる3つのデメリット
デメリット① 繰越損失の権利が消える
赤字の年に申告しなかった場合、その損失は翌年以降に引き継げません。申告することが権利を確定させる唯一の方法です。「来年まとめて申告すればいい」は通用しません。
デメリット② 住民税・国保の減免が受けられない場合がある
所得が低い・ゼロの年は、住民税の均等割が減額されたり、国民健康保険料の軽減(7割・5割・2割軽減)が適用されたりします。
この軽減を受けるには、所得ゼロであることを市区町村が把握している必要があります。確定申告または住民税申告をしていない場合、自治体は所得を把握できないため、軽減が適用されないことがあります。
デメリット③ 収入証明が出せない
ローン審査・家賃保証・助成金申請など、収入証明(課税証明書・所得証明書)が必要な場面で、無申告だと「所得なし」とも「不明」とも証明できない状態になります。独立直後にこれで困る人は意外と多いです。
赤字のときの確定申告のやり方
Step 1:青色申告の申請が前提
純損失の繰越控除は青色申告者だけの制度です。まだ青色申告の承認を受けていない場合は、翌年分から適用できるように「青色申告承認申請書」を期限内に税務署に提出してください。
青色申告を既に行っている場合は、赤字の年もそのまま青色申告で申告すればOKです。
Step 2:損益計算書(青色申告決算書)で赤字を確定させる
会計ソフトで1年間の収支を入力し、青色申告決算書(損益計算書)を作成します。売上から経費を引いた事業所得がマイナスになっていれば、その金額が純損失です。
Step 3:確定申告書の「純損失の金額」欄に記入する
確定申告書(第一表)の「純損失の金額」欄に損失額を記入します。あわせて確定申告書「第四表(損失申告用)」の添付が必要です。詳しくは国税庁サイトまたは最寄りの税務署でご確認ください。
会計ソフトを使っていれば、損益計算書から確定申告書への転記は自動で行えます。
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Step 4:翌年以降の申告で繰越損失を控除する
翌年の確定申告で所得が出た場合、前年の損失を差し引いて課税所得を減らします。最大3年間、損失がなくなるまで繰り越せます。
繰越損失は「使い忘れ」が一番もったいないです。会計ソフトに登録しておけば翌年の申告時に自動で反映されます。
赤字申告でよくある疑問
Q. 赤字でも申告期限(3月15日)は同じ?
はい、同じです。翌年の3月15日までに申告する必要があります。期限を過ぎると繰越損失の権利が認められない場合があるため、赤字の年こそ期限内申告が重要です。
Q. 開業初年度の赤字も繰り越せる?
開業届を出した年から青色申告の承認を受けていれば、初年度の赤字も繰り越せます。ただし、開業前の支出(開業費)は「繰延資産」として計上し、事業開始後に任意のタイミングで経費にする処理になります。開業費の扱いについては→開業届の書き方・出し方もあわせてご覧ください。
Q. 副業の赤字も繰り越せる?
個人事業として行っている副業が「事業所得」に該当する場合は繰り越せます。ただし、「雑所得」に分類される副業の赤字は繰越の対象外です。副業収入が事業所得か雑所得かの判断は規模・継続性などによって異なります。迷う場合は税理士や税務署に確認してください。
まとめ
- 青色申告者は赤字を最大3年間繰り越せる。白色申告では使えない
- 赤字の年に申告しないと繰越損失の権利が消える。「来年まとめて」は通用しない
- 住民税・国保の軽減、収入証明の発行にも申告が必要
- 会計ソフトを使えば翌年の繰越処理まで自動で引き継ぎ可能
赤字の年ほど、確定申告ソフトで正確に損失を記録しておくことが将来の節税につながります。→フリーランス確定申告のやり方完全ガイドもあわせてどうぞ。
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