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「廃業届1枚出せばOK」は危険な思い込み
事業をやめる決断をしたとき、多くの人がこう思います。「税務署に廃業届を出せば終わりでしょ?」
その思い込みが、あとになって面倒な手続きを引き起こします。
青色申告会の窓口にいた頃、毎年こんな相談が来ていました。「廃業届だけ出して終わったと思っていたら、消費税の申告書が届いて困っている」「都道府県から個人事業税の通知が来たが、廃業したはずなのに」という声です。
廃業届は、状況によって最大5種類の書類を提出しなければなりません。どれが自分に必要かを事前に確認してから動くことが、後悔しない廃業手続きの第一歩です。
廃業届に必要な書類は最大5種類ある
すべての人が5種類出す必要はありません。自分の状況に該当するものだけを選んで提出します。
① 個人事業の開業・廃業等届出書(全員)
廃業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。開業時に提出したものと同じ書式で、「廃業」の欄にチェックを入れて提出します。
提出先は納税地を管轄する税務署。提出期限は廃業後1か月以内です。罰則はありませんが、提出しないと「事業が継続している」とみなされ、毎年確定申告書の提出が求められます。
提出方法は3種類あります。
- 税務署の窓口に持参する
- 郵送で送付する
- e-Tax(マイナンバーカード+ICカードリーダーが必要)
② 所得税の青色申告の取りやめ届出書(青色申告者のみ)
青色申告をしていた場合、廃業届と同時に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出します。提出期限は取りやめる年の翌年3月15日ですが、実務上は廃業届と一緒に出してしまうのが一般的です。
これを忘れると翌年以降も青色申告者として扱われ続け、再び事業を始めるときに改めて「青色申告承認申請書」の提出が必要になります。
③ 事業廃止届出書(消費税課税事業者のみ)
消費税の課税事業者だった場合、「事業廃止届出書」を税務署に速やかに提出します。明確な提出期限は定められていませんが、目安は廃業後1か月以内です。
以下のいずれかに該当する人が対象です。
- 前々年の課税売上高が1,000万円を超えていた
- インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしていた
- 「消費税課税事業者選択届出書」を提出して自ら課税事業者を選んでいた
④ 給与支払事務所等の廃止届出書(従業員がいた場合)
従業員やアルバイトを雇っていた場合に必要です。従業員がいなかった場合は不要です。
⑤ 個人事業税の事業廃止届(都道府県税事務所)
個人事業税の課税対象だった場合、都道府県税事務所にも廃業の届出が必要です。税務署とは別の窓口になるため見落としがちです。書式は都道府県によって異なるため、管轄の都道府県税事務所に確認してください。
事業の一部だけ廃業する「一部廃業」の手続き
複数の事業を営んでいて、そのうちひとつだけをやめる場合は「一部廃業」として手続きします。
廃業届の「全部」か「一部」かを選んで記入する
「個人事業の開業・廃業等届出書」には、廃業の範囲を選択する欄があります。すべてをやめるなら「全部」、一部のみなら「一部」にチェックを入れ、カッコ内に廃止する事業名を記入します。
例えば、Webライターとせどりを兼業していてせどりだけをやめる場合は「一部(物品販売業)」と記入します。チェック漏れや記入漏れがあると、税務署側で全廃業とみなされる可能性があるため注意が必要です。
一部廃業では残った事業の開業届の再提出は不要
一部廃業をしても、継続する事業について改めて開業届を出し直す必要はありません。廃止する事業だけを届け出れば、残りの事業はそのまま続けられます。
→ 開業届の書き方については開業届の書き方・出し方完全ガイドもあわせてご覧ください。
消費税課税事業者だった場合の追加手続き
事業廃止届出書をすみやかに提出する
消費税の課税事業者だった場合、「事業廃止届出書」を速やかに税務署へ提出します。提出が遅れると消費税の申告義務が続いているとみなされる可能性があるため、廃業届と同時に提出するのが確実です。
インボイス登録していた場合は別途手続き不要
インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしていた場合、取り消し手続きを心配される方が多いのですが、実はシンプルです。
事業廃止届出書を提出すれば、インボイスの登録も自動的に失効します。「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を別途提出する必要はありません。
簡易課税を選択していた場合
消費税の簡易課税制度を選択していた場合、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」に廃業した旨を記載して提出すれば、事業廃止届出書の提出があったものとして扱われます。書類を一本化できる特例です。
廃業届の書き方【主な記入項目】
| 記入項目 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 納税地 | 自宅住所または事業所の住所 |
| 氏名・マイナンバー | 本人の氏名とマイナンバーを記入 |
| 廃業等の事由 | 「全部」または「一部(事業名)」を選択 |
| 廃業日 | 実際に事業をやめた日。廃業後の支出は原則経費不可 |
| 廃業の理由 | 「転職のため」「事業不振のため」など。詳細でなくてOK |
e-Taxでの提出と注意点
廃業届はe-Taxでも提出できます。ただしマイナンバーカードとICカードリーダーが必要で、スマートフォンだけでは完結できません。
ICカードリーダーを持っていない場合は、税務署窓口への持参か郵送の方が確実です。e-Taxでの手順はe-TaxソフトWeb版にログインし、「申告・申請・届出」メニューから「個人事業の開業・廃業等届出書」を選んで入力・送信するだけです。
廃業後も確定申告が必要な3つのケース
廃業したからといって、その年の申告義務がなくなるわけではありません。
ケース①:廃業した年に収入があった場合
廃業した年の1月1日から廃業日までに事業所得があった場合、翌年の確定申告が必要です。売上が数万円でも、経費との差額がプラスなら申告義務があります。
なお、年末ギリギリに廃業すると廃業した年と翌年の2年分の申告が発生するケースがあります。年内で廃業を完了させることを意識しておきましょう。
ケース②:純損失の繰越がある場合
青色申告で赤字(純損失)を繰り越している場合、収入がゼロでも確定申告が必要です。繰越損失を活かしたい場合は廃業後も申告を継続してください。
→ 純損失の繰越についてはフリーランスが赤字でも確定申告すべき理由をご覧ください。
ケース③:廃業後に就職した場合
廃業後に会社員になった場合でも、廃業した年の事業所得が20万円を超えていれば確定申告が必要です。会社で年末調整を受けても、事業所得分は自分で申告しなければなりません。
まとめ:廃業手続きチェックリスト
廃業の手続きを漏れなく終わらせるために、以下のリストをご活用ください。
廃業手続きチェックリスト
税務署(全員)
- ☐ 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業後1か月以内)
税務署(該当者のみ)
- ☐ 所得税の青色申告の取りやめ届出書(青色申告者)
- ☐ 事業廃止届出書(消費税課税事業者)
- ☐ 給与支払事務所等の廃止届出書(従業員がいた場合)
都道府県税事務所(該当者のみ)
- ☐ 個人事業税の事業廃止届
廃業後の確認事項
- ☐ 廃業した年の所得を翌年に確定申告する
- ☐ 純損失の繰越がある場合は申告を継続する
- ☐ 廃業後就職した場合も事業所得20万円超なら申告が必要
廃業した年も確定申告が必要なため、帳簿の整理と申告書の作成が最後の大仕事になります。会計ソフトを使えばデータをそのまま活用して申告書を自動作成できるため、最後の申告もスムーズに終わらせられます。
どれも無料期間があります。廃業した年の申告にだけ使って解約する方もいます。
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